■突如命を落としたシリーズを代表する主人公
頼りがいのある仲間も、無邪気な明るい少年も、等しく悲しい死の運命が降りかかってくる『ジョジョ』。強キャラ・人気キャラでも死ぬときはあっさり死んでしまうという、運命の非情さが演出されているが、中でも多くの読者に衝撃を与えたのが6部「ストーンオーシャン」での空条承太郎の死だろう。
承太郎といえば、初めてスタンドの概念が描かれた3部「スターダストクルセイダース」の主人公で、『ジョジョ』のアイコンともいえる存在。6部はその娘・空条徐倫が主人公の物語である。
6部に承太郎が登場して読者も心強い気持ちになったのも束の間、記憶とスタンド能力をディスク化して奪うスタンド・ホワイトスネイクに襲撃され、物語序盤で仮死状態となってしまう。
その後、徐倫の奮闘でディスクを取り返し復活するが、今度はラスボス・プッチ神父の新スタンド能力「メイド・イン・ヘブン」によって死んでしまう。
正確には、“全宇宙を一巡”させたプッチ神父により、承太郎は他の生物と同じタイミングで命を落とした。具体的な死のシーンは描かれることなく、そもそも世界自体が崩壊するというあまりにも規模の大きい展開で、じっくり感傷に浸れなかったという読者も多いはず。そもそもこの辺りはスタンド能力の設定がかなり複雑になっており、漫画を読んでいて状況把握に必死になってしまったのは筆者だけではないだろう。
そういった意味では2部「戦闘潮流」で主人公・ジョセフの相棒のような立ち位置で戦い、華麗に誇り高く散ったシーザー・A・ツェペリはその死に様もかなり印象的だった。歴代キャラの中でも特段に人気が高い承太郎だが、あっさりした華々しくもない最期の描かれ方は『ジョジョ』ならではのものかもしれない。
どのキャラクターも、その生き様に敬意を評したふさわしい死亡シーンが見たくなるが、『ジョジョ』における作品の演出としては、こういった強キャラの「あっけない死」が逆にリアルな世界観を強調しているのではないか。