「え、時間を止めちゃうの!?」リアル路線から異能バトルへ…『テニスの王子様』必殺技の「トンデモ化」はどこまで進むのかの画像
アニメ『新テニスの王子様 U-17 WORLD CUP SEMIFINAL DVD BOX』 (c)許斐 剛/集英社・NAS・劇場版テニスの王子様プロジェクト

 『ジャンプSQ』で連載中の『新テニスの王子様』世界大会編がクライマックスに突入している。決勝戦の相手は強豪スペイン。シングルス1(S1)では日本代表・徳川カズヤとスペインのプロ選手アントニオ・ダ・メダノレの激突が幕を開けた。

 本作でしばしば話題になるのが、『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンド能力を彷彿させる必殺技の数々だ。テニス漫画のはずが、なぜぶっ飛んだ“異能”が次々と飛び出すのか。今回は作中に登場する能力を振り返りつつ、その理由について深掘りしていこう。

※本記事には作品の内容を含みます

■バトル漫画並みの必殺技が続々登場!?

 許斐剛氏による『テニスの王子様』は、1999年に『週刊少年ジャンプ』で連載スタート。中学校の部活動テニスを題材とした王道テニス漫画でありながら、バトル漫画さながらの個性豊かな必殺技が登場するのも特徴だった。さらに、2009年に『新テニスの王子様』となってからは、ますます別次元の必殺技で読者の度肝を抜いている。

 S1でも挨拶替わりとばかりにメダノレが披露したのは、「ラドロン・デ・ディエンポ(時間泥棒)」という能力。これはなんと、相手の時間を奪い、自身のみが止まった時間の中で自由に行動できるというもの。メダノレは一度ネットを越えて徳川の側へ行き、ボールの軌道を確認してから自陣に戻り、余裕で返球するという描写があった。これはまさしく、『ジョジョ』に登場するDIOの「ザ・ワールド」そのもの。時間停止系の能力がテニスの試合中に発動するという荒唐無稽さが、本作らしい「別次元のテニス」の極致と言えよう。

 対する徳川は、過去にデューク渡邊によって破壊された「阿修羅」を「千手観音」という技に進化させていた。その圧倒的な多腕による対応力は、時間泥棒すらも封じ込めるほどで、まさに別次元の進化体といえる。試合中には、時間停止の中で仕掛けられた攻撃に対しても、まるで予知していたかのようにブラックホールを自陣に作り出し、反撃に転じる描写が描かれていた。

 そもそも、“スタンド”的存在は『新テニスの王子様』になってから明確に描かれ始めたものだが、その萌芽は本編中にすでに現れていた。最初に確認されたのは、関東大会決勝で越前リョーマの背後に浮かび上がった“侍”の幻影である。当初はオーラのような演出と見られていたが、次第に対戦相手にも視認可能であることが描かれ、別次元テニスの象徴として存在感を増していった。

 その後、“スタンド”的なビジュアルを伴う技は多くのキャラクターに見られるようになる。フランス代表のプランス・ルドヴィック・シャルダールは馬に乗り鎧を身につけた“騎士”を持ち、魂のぶつかり合いとも言うべき精神世界の戦闘を展開。平等院鳳凰は“海賊”を使いこなし、その姿はときに骸骨、ときに人間と形を変え、相手を剣や銃で嬲り殺す。今後のさらなる進化も示唆されており、ますます強力な能力となる可能性が高い。

 鬼十次郎は“鬼神”を発現させており、その威圧感だけで対戦相手はもちろん周囲の観客までも圧倒してしまう。試合を観ていたドイツチームの監督もその姿を目撃しており、その姿が対戦相手だけでなく、観戦者にも見えていると分かる。

 デューク渡邊は、その本気を隠してきたが、実は「破壊の魔神」と呼ばれる能力を持つ強者であることが判明した。これは対戦相手の能力そのものを破壊することができ、ボールではなく対戦相手をコートの外にまで吹っ飛ばす。

 このように、相手の能力自体に干渉し、消滅させる能力まで登場していることから、作品内のバトルはますます“異能力漫画”の色を濃くしている。

  1. 1
  2. 2
  3. 3