■ガンダムの完全量産を目指した幻の機体
最後は、ガンダムを超える性能での量産化を目指しながら、実際のところは量産されなかった機体を取り上げておきたい。
それがゲーム『機動戦士ガンダム戦記』(バンダイ)や、夏元雅人氏による漫画『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』(KADOKAWA)などに登場した「ジーライン」だ。
『機動戦士ガンダム』におけるガンダムは量産を前提に開発された試作機であり、そのデータをもとに生産性と整備性を重視して量産されたのが「ジム」だった。だが、ニュータイプのパイロットが搭乗時も高い性能を誇ったガンダムの性能をそのままに、量産化を目指したのが「ジーライン」である。
スペック上はガンダムを上回り、基本フレームにさまざまなオプションパーツや追加装甲を換装することで、いろんな戦局に対応可能。軽装の高機動タイプ「ジーライン ライトアーマー」、近接格闘特化の「ジーライン アサルトアーマー」などに換装でき、宇宙世紀0083年の技術でカスタムされたジーラインの最終形「ジーライン フルカスタム」などもある。
しかし、実際のところジーラインは一年戦争中の開発が間に合わず、オーバースペックすぎる量産計画は戦後に頓挫した。ジーラインのコンセプトで数機の試作機が作られたが、「RX-81」というジーラインの形式番号を見ても、そもそも一年戦争時に本当に開発が進められていたのか疑問である。
ジーラインは、コストダウンして量産されたジムとは違い、ガンダムの性能のまま量産化するというコンセプトだったが、前述したジム・スナイパーIIのようなガンダムの性能を上回る優秀なジムが生まれた時点で、企画倒れだったのかもしれない。
ガンダムの世界で「量産型」といえば、ワンオフ機よりも性能面は低く見られがちだ。しかし、なかにはガンダムの性能をも上回る、高性能な量産機も存在した。『機動戦士ガンダム』のアニメ内には登場しなかった機体ばかりだが、アムロたちの活躍の陰でこうした量産機が戦う場面を想像するだけでもおもしろい。