
1987年にカプコンから初代作品が発売され、以降、その高いクオリティから数々のナンバリング作品、外伝作品が生み出されている格闘ゲームの金字塔『ストリートファイター』シリーズ。
我々もよく知る格闘技はもちろん、世間には広まっていない知る人ぞ知るレアな流派、ゲームならではのとんでもない戦い方……と、多種多様な戦法が登場するのも本作の魅力だ。だが、なかにはあまりにも型破りな戦い方やキャラ性でプレイヤーの度肝を抜く尖った個性のキャラも存在する。
そこで、『ストリートファイター』に登場する一度見たら忘れることができない「ぶっとんだイロモノキャラ」たちの活躍を見ていこう。
■挑発に関しては右に出る者なし?『ストリートファイターZERO』火引弾
格闘ゲームといえば、特定の条件を満たした時に出現する「隠しキャラ」の存在も、醍醐味の一つだ。『ストリートファイター』シリーズにも作品ごとに隠しキャラが登場するのだが、なかには単純な強さだけでなく、意外な性能でプレイヤーを驚かせたキャラもいる。
その代表的な存在が、『ストリートファイターZERO』の隠しキャラとして初登場したダンこと格闘家・火引弾だろう。
ダンは独自に編み出した我流の格闘術「サイキョー流」で戦うのだが、性能はというと、どこか中途半端な感が否めない。
たとえば、片手から放つ飛び道具「我道拳」はほとんど飛ばずに消え、対空技の「晃龍拳」は無敵時間に難あり、相手にサイン色紙を投げつける遠距離技「プレミアムサイン」はたいして威力がない……など、あらゆる技がイマイチでお世辞にも強いキャラとは言えないのだ。
だが、そんな彼を語るうえで外せないのが、なぜか異様にバリエーションが多い「挑発」の存在だ。本来キャラクターが繰り出す挑発はそれほどパターンが多くないが、ダンには空中やしゃがみ状態、わざわざ前転、後転を交えたバリエーションが用意されている。
さらに、なんと必殺技ゲージを消費し、ただひたすら威力がない挑発を掛け続ける大技「挑発伝説」まで登場。もともとコメディ要素が強いキャラだが、そのイロモノキャラぶりに拍車がかかる一方なのだ。
ファイターとしては個性的すぎるダンだが、その突き抜けたキャラクター性から人気も高く、その後もナンバリング作品に登場し、破天荒な技の数々でプレイヤーを驚かせ続けている。
■油まみれで大暴れするナイスガイ…『スーパーストリートファイターIV』ハカン
『ストリートファイター』シリーズのなかでも、特殊な戦い方で強烈なインパクトを与えたのが、2010年発売の『スーパーストリートファイターIV』で初登場したハカンだ。
赤みを帯びた巨岩のような肉体と、大仏を彷彿させる短い青髪が特徴的なハカン。食用油メーカーの社長という異色な経歴もさることながら、やはり最大の特徴は彼が使いこなす流派「ヤール・ギュレシュ」だろう。
なんとこれは実在するトルコの国技で、体に油を塗って相手と取っ組み合う、レスリング競技の一種なのだ。
そんな彼だが、とにかく体に塗った油を自由自在に使いこなす技が多い。
床を滑って相手に突進、掴んだ相手を油によって押し出し投げる……なんてのは序の口。掴み取った相手とともにステージを高速移動したり、肉体の周囲を滑らせ加速させた相手を砲弾のように射出したりと、常人離れした油の使い方で相手を翻弄するのだ。
持ち前の力強い投げ技だけでなく、モチーフとなる流派の特性がキャラクターの造形に組み込まれているのがなんとも面白い。
だが、筋骨隆々とした大男が全身から油を滴らせ、対戦相手の肉体に食らいついていく姿はなんとも異様……。彼を使いこなすには、愛用の油をいかに切らさないように立ち回るかが、最重要となってくる。
そんな強烈なキャラ・ハカンだが、そのインパクトにより「ヤール・ギュレシュ」の名を広めることにも一役買っているという。プレイヤーたちに新たな格闘技の世界を見せつけた、個性的なキャラクターである。