■お前と戦えて良かった…さらばだ! 敵が負けを認めて自ら落下するシーン
昭和の王道漫画には、負けを認めると自ら谷などに身を投げるシーンもよく見られた。
そのうちの1つが、上述した『北斗の拳』である。主人公・ケンシロウと戦った南斗六聖拳の1人であるシンは、ケンシロウとの戦いに破れ、自ら身を投げている。
シンはケンシロウの愛するユリアを奪い、胸に7つの傷を付けた男だ。そんなシンに怒りの北斗神拳を浴びせたケンシロウ、シンは徐々に追い詰められるものの「おれはおまえの拳法では死なん!!」といい、自ら建物の上から飛び降りてしまう。
シンは“殉星”の宿命を背負う男であり『北斗の拳』においてストーリーを展開する重要なキャラだった。そんな男の死にざまは、やはりやられるよりは自ら散っていくのがふさわしかったのだろう。
また『ダイの大冒険』にも、主人公・ダイと戦ったうえ、負けを認めて自ら谷に落ちるキャラが登場した。それが、魔王軍百獣魔団の団長・クロコダインだ。
クロコダインは当初人間を軽蔑しダイを追い詰めていく敵役だったが、ダイとの戦いを通して自分の愚かさや人間の絆を認めるようになる。ダイのアバンストラッシュを受けよろめいたクロコダインは「さらばだダイ……負けるなよ……勇者はつねに強くあれ…!」という言葉を残し、自ら塔の上から身を投げるのだ。
最初は嫌なキャラだと思っていた悪役も、このように自ら幕引きをすると読者の見る目も変わるものだ。それもあってかクロコダインはその後思わぬ復活を遂げ、ダイたちにとって欠かせないサポート役として活躍していくこととなる。
懐かしい昭和少年漫画のあるあるシチュエーション。いずれも現実ではありえない展開が多いが、そのようなとんでもない設定に読者はドキドキし、夢中になったものである。
現在人気のバトル漫画における「あるある」シチュエーションはどうなっているのか。それを昔と見比べて読むのも、また楽しいのではないだろうか。