■巨大化する“悪魔”のガンダム『機動武闘伝Gガンダム』デビルガンダム

 今回のテーマにおいて、『機動武闘伝Gガンダム』のデビルガンダムは外すことのできない機体だろう。前述のヴァサーゴ&アシュタロンが個別の悪魔の名を冠していたのに対し、こちらは“デビル”そのもの。まさに名に恥じぬ凶悪な存在として描かれる。

 もともとデビルガンダムは、ネオジャパンが開発した「アルティメットガンダム」として誕生。「自己再生」「自己増殖」「自己進化」を可能にする“アルティメット細胞”により、地球環境の再生を目的としていたが、暴走によりその姿も目的も大きく逸脱していく。前述したサイコ・ガンダムのように、やはり有機物と無機物が混在するロボットは異様な存在感を漂わせるものだ。

 中でも特筆すべきは、今川泰宏総監督が永井豪氏の漫画『魔王ダンテ』から着想を得たという、巨大なガンダムヘッドから胴体や四肢が生えた構造だ。その異様なビジュアルは、もはやMSというよりキメラや怪獣、あるいは地獄から来た悪魔に近いビジュアルだった。

 恐ろしいのは外見だけではない。デビルガンダムは自律行動が可能で、基本的にパイロットすら必要としないが、その制御には“生体コア(生体ユニット)”と呼ばれる人間が不可欠とされている。つまり、人間を制御用のパーツとしているというのだ。物語終盤、ヒロインのレイン・ミカムラが生体コアとして取り込まれる展開は、当時小学生だった筆者も含め、多くの視聴者に深いトラウマを残した。

 さらに終盤では、ネオジャパンのコロニーを丸ごと侵食し、機体はますます巨大化。ついには地球全土を取り込もうとするまでに肥大化していく。その姿はもはや「ガンダム」という名がまったく似つかわしくない、地球そのものを脅かす“災厄”と化していった。見た目、設定、そして存在感全て含めて不気味な、恐ろしい機体だ。

 ガンダムといえば「かっこよさ」で語られることが多いが、本記事で取り上げた機体たちは、そんな常識をあざ笑うかのような“異形”の存在ばかりだった。

 一見「気味が悪い」「奇抜すぎる」と感じられるそのデザインも、実は緻密な設定や機能的な必然に裏打ちされたもの。それぞれの機体が、単なるインパクト重視ではなく、物語や世界観に深く根ざした存在として描かれていた。

 常識を超えた造形は、『ガンダム』というシリーズの懐の深さと、常に新たな表現に挑み続ける姿勢の証でもあった。

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