■ 心あたたまる“卒業ライブ”『けいおん!』
『けいおん!』はガールズバンドブームの火付け役とも言われる作品で、かきふらいさんによる4コマ漫画を原作としている。テレビアニメが全2期、劇場版が1作品制作されている。
「放課後ティータイム」こと桜が丘高校軽音部のゆるい日常を描く本作だが、実はその演奏シーンも本格的だ。中でも筆者の印象に強く残っているのが、第2期の最終回。このエピソードでは、唯一の2年生である中野梓を除く、平沢唯をはじめとしたバンドメンバーの卒業が描かれる。
卒業式の日の部室にて、大好きな先輩たちを笑顔で送り出そうとしていたものの、途中で耐え切れず泣き出してしまった梓。そんな彼女をなだめて落ち着かせた後、3年生たちは「天使にふれたよ!」を演奏し始めた。
この曲は梓のために作られたもので、歌詞には“これからも仲間”、“大好き”といった、彼女を勇気づけるような言葉が散りばめられている。3年生それぞれが梓をまっすぐ見ながら自分のパートを歌う姿からは、やさしさとあたたかさがにじみ出ている。
演奏中に梓はまた泣き始めてしまうが、その涙には悲しみや寂しさだけでなく、前を向くための気持ちも含まれているように見えた。梓のためだけに開かれた“卒業ライブ”。これまで彼女たちが過ごした楽しい時間が一瞬でよみがえり、こちらも思わず号泣してしまった。
■圧巻のギターテクにシビれる『ぼっち・ざ・ろっく!』
はまじあきさんの4コマ漫画が原作の『ぼっち・ざ・ろっく!』は、音楽アニメとして絶大な評価を受けた人気作。アメリカのアニメメディア・Anime Trendingの「9TH TRENDING AWARDS」で史上最多8冠を達成するなど、国内外で話題を呼んだ。
本作では、人見知りで引っ込み思案の後藤ひとり(通称・ぼっち)がガールズバンド「結束バンド」に入り、音楽活動を通して大きく成長していく。人と話すことが苦手なぼっちが、ライブで堂々としたギターソロを披露する姿は実に鮮やかでカッコイイ。
第8話で初ライブの日を迎えた「結束バンド」だったが、台風の影響でキャンセルが続出。10人ほどしか客がいない上、ほとんどが他のバンド目当てという状況で、メンバーは心が折れてしまった。当然演奏にも身が入らず、観客からは「やっぱ全然パッとしないわ」と呟かれてしまう……。
しかし、2曲目に入る直前、ぼっちがいきなりギターソロを始め、流れを一変させる。気まずい空気を切り裂くような音色に、メンバーも背中を押されたように演奏を開始。そこからは調子を取り戻し、観客の心もしっかり掴んでいた。
ぼっちが「このままじゃ嫌だ!」と前に出るこのシーンは、普段のオドオドした姿を知っているからこそ心動かされるし、勇気をもらえる。興味なさげだった客の視線を集めたところでは、思わずスカッとさせられた。
ストーリーはもちろん、演奏シーンも大きな見どころの音楽アニメ。演奏描写に細部のこだわりが光ったり、登場人物の心情とあわせるとグッときたりと、作品ごとにまたちがった魅力がある。あなたの心に残っている“神音楽アニメの演奏シーン”には、どんなものがあるだろうか?