一見の価値アリ!演奏シーンがすごすぎる『音楽アニメ』アニメ史に残る神シーン 「これは鳥肌モノ…」の画像
『BLUE GIANT』DVDスタンダード・エディション ©2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 ©2013 石塚真一/小学館

 2025年4月から6月にかけて放送されたアニメ『ロックは淑女の嗜みでして』。本作の演奏シーンは、モーションキャプチャーの技術を駆使し、ハードロックバンド・BAND-MAIDのパフォーマンスに基づいて作られたもので、そのリアリティや迫力が高く評価された。画面からあふれる「ロック魂」に心揺さぶられた視聴者も数多いことだろう。

 過去にも本作のような、作中の演奏シーンが大きな話題となった“音楽アニメ”は数々存在する。圧倒的な表現に、音楽好きもそうでない人も思わずのめり込んでしまう……そんな「神音楽アニメ」のすごすぎた演奏シーンを5つ振り返っていこう。

※本記事には各作品の内容を含みます

■細部のこだわりが光る『BLUE GIANT』

 『BLUE GIANT』は石塚真一さんによるジャズ漫画で、2023年にアニメ映画化された。テナーサックスを愛する主人公・宮本大が、凄腕ピアニスト・沢辺雪祈と初心者ドラマー・玉田俊二とともにジャズの道を極める物語だ。

 原作漫画では当然、演奏シーンに音はない。しかし、演奏時の指先の動きや表情、楽器の構え方といった細部がリアリティたっぷりに描かれ、まるで音が聴こえてくるような説得力がある。だからこそ、映像化が決まった際には、演奏シーンが自分のイメージとずれてしまうのではないかと思ってしまうほどだった。

 ところが、実際にアニメを見ると、そんな不安など一瞬で吹き飛ばされてしまった。オーディションで満場一致で選ばれたサックス奏者・馬場智章さん、そして世界的なジャズピアニスト・上原ひろみさん、くるりのサポートメンバーやmillennium paradeなどで活躍するドラマー・石若駿さんによる演奏は、最高の一言に尽きる。

 物語中盤のカツシカジャズフェスティバルでの演奏シーンでは、大が吹くサックスのパワフルな音を聴いた途端、一気にその音楽に引き込まれた。雪祈がすさまじい集中力で繰り広げるピアノソロにも聴き惚れてしまい、気付けばあっという間に演奏が終わっていた。

 もちろん、音だけではない。演奏者の感覚を反映したかのような自由で躍動感あふれるカメラワーク、馬場さんや上原さんの映像を参考にして作画したという演奏者の身体の動きなど、映像も素晴らしい。

 その他、終盤での雪折の覚醒シーンや玉田がラストで見せるドラムソロなど、名場面を挙げればキリがない。原作ファンとしては、“大のサックス”を聴けるだけでも贅沢すぎるアニメ化だった。

■楽しそうなセッションに心惹かれる『坂道のアポロン』

 2012年に放送されたアニメ『坂道のアポロン』は、小玉ユキさんのジャズ漫画を原作としている。周囲に心を閉ざしがちな優等生・西見薫が、破天荒な不良・川渕千太郎と出会い、ジャズにのめり込んでいく姿が描かれる。

 音楽を担当するのは、アニメ『カウボーイビバップ』のスタイリッシュな音楽などで知られる菅野よう子さんだ。ジャズを通して描かれる高校生たちの青春模様を、軽やかで瑞々しい音楽の数々で彩っている。

 本作で特に印象的な演奏シーンといえば、第7話の学園祭での一場面。とあるバンドの演奏中に機材トラブルがあり、薫と千太郎が時間を稼ぐためにジャズセッションを披露するシーンだ。

 「少しの間俺がつなぐ」とピアノを弾き始めた薫を見て、千太郎が途中からドラムで加わる。突然のことで打ち合わせなどしていなかったにもかかわらず、息ぴったりに音楽を紡いでいく2人。軽やかにアレンジされたミュージカル曲『My Favorite Things』に始まり、ディズニー映画『白雪姫』より『いつか王子様が』の躍動感あふれるアレンジを経て、ジャズの名曲『Moanin’』へとたどり着く流れも見事だ。

 実はこのエピソードの直前まで、薫と千太郎はちょっとしたすれ違いをしていた。だからこそ、言葉なしで通じ合い心の底から楽しそうにセッションする姿には、思わず胸がアツくなってしまう。

■手に汗握るコンクールのシーン『響け!ユーフォニアム』

 武田綾乃さんの小説を原作とするアニメ『響け!ユーフォニアム』は、高校の吹奏楽部を舞台に描かれる青春群像劇だ。アニメは3期制作され、劇場版作品も大ヒットを記録。2026年には『最終楽章 響け!ユーフォニアム』の劇場公開も控えている。

 吹奏楽に青春をかける高校生たちの葛藤をていねいに描く本作。吹奏楽経験者が「あるある」と共感するのはもちろん、それ以外の人も思わず感情移入してしまう人間ドラマも見どころのひとつだ。 

 本作の第1期で特に印象深いのはやはり最終話、吹奏楽コンクールで自由曲「三日月の舞」を演奏するシーンである。「三日月の舞」は本作のために書き下ろされた、ストーリーの核ともいえる曲だ。

 トランペットの輝かしいファンファーレで幕を開けるこの曲は、非常にきらびやかで壮大な雰囲気。しかし、途中には音量もテンポもぐっと抑えられ、トランペットのソロが際立つ箇所がある。甘く歌い上げるような旋律は、メインの華やかな部分とのギャップもあって強く印象に残る。

 コンクールでの演奏に至るまで作中では、ソロを吹く部員を決めるオーディションや、練習のとき難しい部分に苦戦する描写など、部員たちの奮闘がていねいに描かれてきた。だからこそこの演奏シーンでは手に汗握り、心から応援したい気持ちになる。まるで本当に吹奏楽コンクールを観に来たかのような緊張感と臨場感が味わえた。

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