努力家でお人よし…初代『ガンダム』ジオンの貴公子「ガルマ・ザビ」は本当に“坊や”だったのかの画像
DVD『機動戦士ガンダム 3』(バンダイナムコフィルムワークス) (C)創通・サンライズ

 アニメ『機動戦士ガンダム』には、「諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ、なぜだ?」と語るギレン・ザビの演説に対し、シャアが「坊やだからさ」とつぶやくシーンがある。この有名なフレーズは『ガンダム』を知らない人でも聞いたことがあるかもしれない。

 ガルマ・ザビを死地に誘ったのは、ザビ家への復讐を企むシャアの謀略ではあったが、シャアがいうようにガルマは本当に「坊や」だったのだろうか。

 そこで今回はガルマ・ザビという人物について掘り下げ、ザビ家の末弟である彼の本質について探ってみたい。

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。

■一年戦争におけるガルマの実績

 ガルマは作中屈指のイケメンキャラで、視聴者からも高い人気を誇った人物。彼の任地だった地球では地球方面軍司令官を務めていた。とはいえ地球では姉のキシリアが上司として突撃機動軍を率いていたため、ガルマは名目上の司令官にすぎなかった。

 しかし単なるお飾りの“お坊ちゃま”かといえばそんなことはなく、占領地の有力者とも積極的に交流を持つシーンが描かれている。

 アニメの第10話でガルマは、占領した現地の要人が参加するパーティに出席。彼自身「連中は虫が好かん」と愚痴をこぼしながらも、表面上は友好的な対応をしている。たとえ気乗りしない行事であっても仕事と割り切り、表向きはいい顔ができるのは、ザビ家ではガルマならではの資質といえるかもしれない。

 実際ジオン軍の地球侵略から月日が経っていたが、地元の有力者は一応ガルマに頭を下げ、ゴマをすったりしている様子を見ると、そこまで横暴な振る舞いをしておらず、懐柔政策はそれなりに功を奏しているように思えた。

 こういったガルマの政治的な面を、とくに兄のドズル・ザビが高く評価していた様子。ガルマの死を知ったドズルは「あやつこそ俺さえも使いこなしてくれる将軍にもなろうと、楽しみにしておったものを……」と本気で嘆いていたのが印象的だった。

■軍人としてのガルマの資質

 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で描かれた士官学校時代のガルマは、優等生でありながらも寝る間を惜しんで勉強し努力を惜しまなかった。そこには、さらに優秀な友人シャアの存在があり、常に意識していたのである。

 実戦で名をあげるシャアに負けじと、ガルマが前線への配属を希望した背景にはそんなライバル心もあったのだろう。

 アニメ『ガンダム』第9話でホワイトベースと交戦時、ガルマは自ら戦闘機ドップに乗り込んで出撃する。迎撃に出てきたアムロのガンダムは、ジャンプを巧みに使った空中戦でドップを次々撃墜。ガルマが乗る隊長機もビームサーベルで斬りつけたが、翼を斬られながらガルマはギリギリのところで回避した。

 これにはアムロも「や、やる!」と驚嘆の声をあげたほどで、ガルマはパイロットとしても非凡な才能を見せている。

 さらにガルマはそのまま母艦「ガウ攻撃空母」のビーム砲の射程圏までガンダムをおびき出すことに成功したが、残念ながらシャアの妨害にあってガウの攻撃は行われなかった。

 もしもこのときガウからの射撃が成功していた場合、ガルマはガンダムを撃破する大金星を挙げていたかもしれない。

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