『名探偵コナン』秘密の宝庫!? 黒の組織・ベルモットにまつわる“未回収の伏線”年をとらない理由や、バーボンが握る重要情報とはの画像
『名探偵コナン スーパーコレクション 特集・黒の組織』(小学館)

 劇場版最新作『名探偵コナン 隻眼の残像』が大ヒットし、話題を呼んでいる青山剛昌氏の『名探偵コナン』。連載開始から30年以上経った本作だが、黒ずくめの組織に関してはまだまだ謎な部分が多い。特に組織のボス「あの方」や薬「APTX4869」には、ストーリーに関わる重大な秘密が隠されているようだ。

 そんな秘密を解くカギになりそうな存在が、謎多き女であるベルモットだ。彼女はあの方に強い忠誠を誓いながら、組織に対して情報を意図的に隠すなど謎めいた言動が目立つ存在である。そこで今回は、『名探偵コナン』の秘密の宝庫とも呼べるベルモットについて、これまでの動向から彼女に関する謎まで紹介していこう。

 

※本記事には作品の内容を含みます 

■作中最高の伏線回収!!『満月の夜の二元ミステリー』

 ベルモットについて語る上で欠かせないのが、その正体が明らかになるエピソード「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」での秀逸な伏線回収だろう。伏線が張られたのは24巻、それが回収されたのは42巻と、長期にわたる伏線回収の見事さは、いまだにファンの間で語り継がれている。

 ベルモットは24巻で初登場した。世を忍ぶ仮の姿であるアメリカの人気女優クリス・ヴィンヤードとして、日本で行われたパーティーに参加していた。そこで殺人事件に巻き込まれるも、その事件自体には無関係。その後、「ちょっと引っ掛かる事もある」とアメリカに戻らず日本に残ることを決めている。

 どんな人物にでもなりすませるベルモットは、パーティーでの一件の後何者かに変装して、江戸川コナンと灰原哀の周辺で暗躍し始める。さらに、時を同じくして、帝丹高校には英語教師ジョディ・サンテミリオンが現れ、コナンたちと親交がある新出智明に接近するなど怪しげな動きを見せた。

 他にも、赤井秀一やジェイムズ・ブラックなど怪しく思える人物が多く登場したが、ベルモットと同じ年格好であったジョディの怪しさは群を抜いていた。何せ、ベルモットを象徴する「A secret makes a woman woman(女は秘密を着飾って美しくなるんだから…)」というセリフまで口にしていたのだ。

 実際、連載当時は、ジョディがベルモットなのではないかと予想する読者も多かった。しかし、驚きの真相が42巻で明かされる。その発端は、コナンのもとに届いたベルモットからの招待状だ。内容は船上でのハロウィンパーティーへの招待であり、明らかに罠だった。

 船上でのパーティーが行われるのと同時刻に、事態は大きく動き出す。ジョディが灰原を阿笠邸から連れ出したのだ。それを新出が目撃して後を追う。この怪しすぎる行動で、筆者はやはりジョディこそがベルモットだったのだと確信した。しかしその後、ついに真実が明かされる。

 なんとジョディはFBI捜査官であり、新出に変装したベルモットをずっと追っていたという。ジョディに正体を暴かれたベルモットが変装を解くシーンでは、思わずゾクリとしてしまった。

 見返すとジョディは「クールキッド」、ベルモットは「クールガイ」とコナンの呼び方が異なる。さらに、新出先生が演技がうまかったり、バスジャックで身を挺してコナンを守ったりと、その正体がベルモットだと示唆する伏線も確かにあった。

 この伏線回収はシリーズ史上最高の呼び声も高く、筆者も個人的に「緋色シリーズ」やラムの正体を巡るエピソード以上に秀逸なエピソードだと感じる。

■年を取らないベルモット

 実はベルモットはかつてジョディの父親を殺し、幼い頃のジョディと言葉を交わしている。正直、この事実を最初に知った時には、「時系列はどうなってるの?」と訳が分からなくなった。なぜなら、外見上、ジョディとベルモットはそれほどの年の差には見えないからだ。

 「貴方… どうして…」「どうして年をとらないの?」。読者の疑問を代弁するように、作中でジョディはベルモットにこう問いかける。ベルモットの外見は、ジョディが子どもの頃に見た姿と変わっていなかったからだ。おまけに指紋を調べてみると、クリスがその母親で同じく女優のシャロン・ヴィンヤードと同一人物だという、衝撃の事実が判明したという。

 ベルモットが「年をとらない」というのは、シリーズの根幹にかかわる大きな謎だ。大女優シャロンとして表舞台で脚光を浴び、現在はその娘のクリスとして生きている。もちろん、年を取った姿を隠すために若作りの変装をしているという可能性もあった。

 しかし作中では、ベルモットが散弾で顔に傷を負い、赤井が「あれがあの女の変装無しの素顔ってわけだ…」と指摘するシーンがある。またシャロンの親友だった工藤有希子に対し、ベルモットは“メイクでも立ち居振る舞いでも老けたフリをしていた”と明かした。

 こうした描写から、ジョディが言っている通り、ベルモットは年を取らないようだ。その理由については、APTX4869が絡んでいるのではないかという予想もされているが、現時点では不明である。いずれにせよ、この謎が作品の根幹にかかわるものであるのは間違いない。

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