■ツンデレな姿がかわいかった『カナカナ』

 『カナカナ』は西森博之さんの同名漫画を実写化した作品で、2022年に放送された。人の心を読める少女・佳奈花をストーリーの主軸に、さまざまな思惑や葛藤が渦巻くハートフルコメディである。

 白石さんが演じたのは、眞栄田郷敦さん演じる日暮正直(通称・マサ)に想いを寄せる沙和だ。沙和はいわゆる“ツンデレキャラ”で、マサに想いを寄せながらツンケンした態度を取ってしまう。心の中では「マサは世界一かっこいいもの!」とまで叫んでいるのに、当人の前では全く素直になれない姿がいじらしい。

 特に、沙和の誕生日パーティのシーンでは、白石さんの多彩な表情が楽しめる。

 この機会にマサに告白をしようと心に決め、精いっぱいのおしゃれをしてきた沙和。マサに褒められて嬉しそうな顔をしたのに、「きもちわりぃこと言ってんじゃねぇぞ!」と照れ隠しをしてしまうのが彼女らしい。そのセリフの後に視線をさまよわせ唇を噛みしめる姿は、「またやってしまった」と後悔しているようにも、ニヤつくのを我慢しているようにも見える。

 しかし、慣れない料理を手伝おうとした結果、沙和は服を汚してしまいマサのジャージを借りることに……。これでは告白は無理だと、意気消沈する姿が切ない。おまけにそんな中、佳奈花の能力を利用しようとする彼女の叔父が、マサのもとにヤクザを送り込んでくる。

 すると沙和は、言いがかりをつけて脅してくるヤクザに少しも怯まず理路整然と言い返す。最後に「覚悟してかかってこいや!!!」とドスの効いた声で言い放つ部分はまさに痛快。その後、マサに「俺は沙和の胆の据わったところ、昔っから大好きだぜ」と笑顔を向けられ、嬉しそうに微笑む姿はギャップが素晴らしい。

 乙女な姿もかっこいい姿も、どちらも見事に演じ分ける白石さんの演技力が光る名シーンだった。

 

 コミカルからシリアスまで、さまざまな作品で活躍してきた白石聖さん。細かい表情や動作、声の使い分けにまでこだわりが感じられる演技は、見れば見るほど味わい深い。来年の大河ドラマの放送開始までに、これまでの出演作での名演技を振り返ってみるのもいいだろう。

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