子どもから大人になった正ちゃん…『オバケのQ太郎』に『鉄腕アトム』、『ひみつのアッコちゃん』も…実は公式に描かれていた「有名漫画の後日談」の画像
『ひみつのアッコちゃん』完全版 1巻(河出書房新社)

 『オバケのQ太郎』『鉄腕アトム』『ひみつのアッコちゃん』。子ども時代に夢中になった名作たちに、実は「公式の後日談」が存在していたことをご存じだろうか。その内容は、ただの「続編」などではない。読む者のノスタルジーを粉々に打ち砕いてしまうほど、衝撃を与える内容なのだ。

 今回は、かつて多くの読者を魅了した名作漫画の知られざる後日談と、その想像を超えた結末に迫る。思い出は楽しく美しいままにしておきたい人には、少々刺激が強すぎるかもしれない。閲覧注意でお届けしたい。

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

■いつまでも子どもではいられなかった『劇画・オバQ』

 藤子不二雄(藤本弘さんと安孫子素雄さん)による、国民的ギャグ漫画『オバケのQ太郎』。その15年後を描いた後日談が、1973年『ビッグコミック』(小学館)に読み切りとして掲載された『劇画・オバQ』だ。原作者のひとり、藤子・F・不二雄さんが手掛けた本作は、タイトルの通り劇画調のタッチで描かれている。

 物語はオバケ学校を卒業したQ太郎が、かつての親友・大原正太(正ちゃん)と再会を果たすところからはじまる。社会人となり結婚もしている正太。彼の暮らすマンションに招かれたQ太郎は、妻もいるその新居にそのまま居候することに……。

 やがて、ゴジラ、キザ夫、よっちゃん、ハカセといったかつての仲間たちが集まり、同窓会が開かれる。もう夢だけでは生きていけない大人になっていることはみんなわかっている。それでも夢を熱く語るハカセに心を動かされ、酔った勢いもあり「おれたちゃ永遠の子どもだ!」と、一致団結して盛り上がるのだった。ちなみに、この場面だけ劇画調から往年の少年漫画風に戻る。その演出がなんとも切ない。

 しかし、なんと翌朝、妻から妊娠を知らされる正太。昨晩の盛り上がりなどなかったかのように、Q太郎にも目もくれず会社へと向かってしまう。そんな姿を見てQ太郎は、かつて一緒に遊んだ子どものころの正太ではなくなったことを悟り、一人静かに街を去っていくのだった。

 『劇画・オバQ』は、かつての親友との再会を通して、“夢見る子どもの終わり”と“大人になる現実”を描いた、あまりにも切ない後日談であった。

■アトムが見た絶望の未来『アトムの最後』

 1970年『別冊少年マガジン』(講談社)に掲載された手塚治虫さんの短編漫画『アトムの最後』。『鉄腕アトム』の後日譚にあたる本作は、手塚さん自身が「いつ読み返しても、陰惨で、いやーな気分がします」と語っている通り、読者に重い衝撃を突きつける問題作だ。

 舞台は西暦2055年。役目を終えロボット博物館で眠るアトムの前に、鉄皮丈夫とジュリーという若いカップルが現れ、彼らの手でアトムが再起動されるところから物語が始まる。丈夫を語り手に、彼の視点から過去と現在、そして絶望の世界が語られていく。

 2人が出会ったのは丈夫が5歳の頃だった。すぐに打ち解けたが、遊び半分でおこなった「首つりごっこ」をきっかけにジュリーは姿を消してしまう。心配した丈夫は探しに行くが、のちに彼女は家出をしたと聞かされ、これを境に疎遠となった。

 再会したのは10年後。成長した2人は惹かれ合い、恋人となる。しかし、なぜか丈夫の両親はその交際に猛反対。その理由はあまりに衝撃的だった。なんと丈夫の“両親”は実はロボットであり、彼自身も“人間の子ども”として飼育されていた存在だったというのだ。

 さらに、すでにこの世界はロボットに支配され、ごくわずかに残された人間も、ロボットのための残酷な娯楽を目的に育てられているという驚愕の事実が明かされる。2人がアトムを再び目覚めさせたのも、そんな絶望の世界からの救いを求めてのことだった。

 しかしそのアトムから、ジュリーもまたロボットであるという残酷な真実が告げられる。そう、実は本物のジュリーは、あの日の“首つりごっこ”で命を落としていたのだった。

 「ロボット? うそだ」絶望の果てに、丈夫はジュリーを破壊してしまう。最愛の人を自らの手で2度も殺したという罪の意識に苛まれ、彼は迫るロボットたちに銃を乱射。だが、その攻撃はまるで通じず、逆に一瞬で殺されてしまうのだった。

 本作でのアトムは脇役であり、丈夫死亡の直前に彼もロボットたちの攻撃によりあっさりと爆散している。みんなのヒーローだったアトムとは思えない、あまりに無力で、無惨な最期だった。

 物語のラストに残されたのは、黒焦げとなった丈夫の亡骸だけ……。かつて人間とロボットが共存していた“あの未来”はもうどこにもない。後日談として描かれていたのは、とんでもないディストピアだった。

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