『アーシアン』「神様が見てるよ」の衝撃…画業40周年「高河ゆん」が描く“美しくも残酷な世界”に魅了されての画像
高河ゆん・著「アーシアン 1巻」(新書館)

 漫画家・高河ゆんさんは、今年2025年で画業40周年のアニバーサリーイヤーを迎える。

 アニメ化もされた『LOVELESS』をはじめ、数多くの人気漫画を生み出し、テレビアニメ『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』ではキャラクター原案も担当して人気を博した。

 代表作のひとつである『アーシアン』は、コミック発売当時に完売する書店が続出。『まんがのヒーロー雑学BOOK:こんなこと知ってる?!』(大陸文庫)によると、「彼女の名前さえ知らなかった大手出版社の営業部たちは、あわてふためいたのだった」と当時の人気と混乱について記されている。

 そんな高河さんは、実は“アニパロ”などで知られる同人作家出身。2015年2月19日発売の『チャンピオンRED』(秋田書店)には、30年前に高河さんの描いた『聖闘士星矢』の同人誌が掲載。原作者である車田正美さんの了承のもと、付録として星矢の同人誌を“復刻”したことでも大きな話題となった。

 そんな高河ゆんさんが自作品に描いた美しいキャラクターや世界観は、いまだに多くのファンを魅了し続けている。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■次々に生み出された「美形」とおぞましき「悪役」

 高河ゆんさんといえば、多くの女性ファンに支持されただけでなく、のちの人気クリエイターにも影響を与えたことでも知られている。彼女が描く、美しく“斬新”な絵柄は大きな魅力である。

 各作品に流麗なタッチで描かれた美しいキャラクターが登場するが、男性キャラの場合、冷たく高貴なイメージの人物の印象が強く、今の「イケメン」という言葉より、「美形」という表現がしっくりくる。ちなみに筆者は『アーシアン』の主人公・ちはやの相棒である影艶(かげつや)が、高河作品を象徴する正統派美形だと思っている。

 商業誌デビュー作となったオルコットの名作『若草物語』のコミカライズには、愛らしくも気品が漂う四姉妹の姿が描かれた。

 また彼女の描く、いわゆる「闇落ちキヤラ」も魅力的。『超獣伝説ゲシュタルト』に登場する司祭オリビエの中に潜む、いわゆる“黒オリビエ”や、『LOVELESS』のもうひとりの主人公・我妻草灯(あがつまそうび)など、多くの闇落ちキャラが女性ファンを魅了した。

 一方では『アーシアン』のミカエルや、『超獣伝説ゲシュタルト』のメサイアのような、高い地位にありながら威厳に乏しいキャラクターに親しみを感じるファンも多いことだろう。

 さらに歪んだ面をしっかり表現した、個性的な敵キャラクターの存在感も忘れられない。『アーシアン』でアンドロイドの多紀を製造した芦野博士のすさまじい執着心に嫌悪感を覚え、『ローラカイザー』では自身の欲望を叶えるためにおぞましい姿になり果てた香山真希に恐怖した。

 いろいろな意味で読者の心を動かしたキャラクターを生み出し続けてきたのだ。 

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