■すべてを飲み込む暗黒空間の脅威…『ジョジョの奇妙な冒険』ヴァニラ・アイス
1986年より連載開始され、今もなお掲載誌を変え、新たな物語が展開され続けている荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』。
部ごとに異なる時代が舞台となる本作において、凶悪な能力で読者を絶望させたのが、第3部に登場するヴァニラ・アイスだ。
3部のラスボス・DIOの配下として登場するヴァニラは、心の底からDIOに忠誠を誓っており、館へと辿り着いたモハメド・アヴドゥル、ジャン・ピエール・ポルナレフ、イギーの3人を迎え撃つ。
特筆すべき点は、やはりこれまでの敵を遥かにしのぐ、その強力無比なスタンド能力だろう。彼のスタンド「クリーム」はあらゆるものを暗黒空間に飲み込み、一瞬で粉微塵に破壊する。作中では建物の分厚い壁をコルクのようにくり抜き、無秩序に破壊して回っていた。
そしてヴァニラは主要メンバーであるアヴドゥルを一瞬で消し飛ばし、ついにはイギーまでも殺害してしまう。
これまでも数々のスタンド使いが立ちはだかってきたのだが、明確に死者を出したのは彼が初めてだった。もしも彼がDIOに反旗を翻していたならば、一瞬で消し飛ばすことが可能だったのではないかと思えるほど、圧倒的な力を見せつけた。
ちなみに、作者である荒木氏は画集『JOJO 6251 荒木飛呂彦の世界』のなかで、ヴァニラを「イヤなヤツ」にしようと意識して描いたが、それがハマりすぎた結果「描いててイヤになった」とコメントしている。
ある意味、作者お墨付きの邪悪極まりない強キャラと言えるのではないだろうか。
バトル漫画において、主人公らに立ちはだかる敵キャラは作品に欠かせない華の一つだ。作中、最大の敵として登場するラスボスは特にそうだろう。
だが、今回紹介したように、ときにラスボスをも上回る強烈なカリスマ性を持った敵キャラも存在する。彼らは圧倒的な戦力だけでなく、ほかの敵キャラとは一線を画す邪悪な魅力によって、物語を大いにかき乱した。
登場人物のみならず、読者を絶望させるほどの印象的な敵キャラたち。主人公たちの勝利を願いながらも、その魅力に惹きつけられるのもまた事実である。