■『烈車戦隊トッキュウジャー』、鑑賞してみた
同年2月から1年間放送された『烈車戦隊トッキュウジャー』で主演を務めた志尊さんですが、新人の頃から裏があるオーラを出していたんでしょうか。気になってさっそく、本作の第1話を観てみました!
冒頭、子どもたちが公園で遊んでいるシーン。本作では「イマジネーション」がキーワードとなっていることを教えてくれ、間髪入れず、想像力豊かな子どもたちにしか見えない悪い列車が登場して彼らをさらいます。1分以内ですべて説明してくれるこのわかりやすさ……ありがたい! 脚本は特撮ファンから絶大な信頼を得る小林靖子さん。職人技です。
そして2分もしないうちに、志尊さんが登場! 列車内で危機感なくグウグウ寝ています。手書きの「定期券」を握って呑気に目を覚ました志尊さんは、悪役がいるのもおかまいなしに外を走る赤・青・黄・緑・ピンクの「レインボーライン」に夢中。「え! なに!?」と瑞々しい声を出します。
そしてリズム感の気持ち良いオープニングが流れ始め、クレジットを見てびっくり! ええええ! 横浜流星さん!? 横浜さんがグリーンを担当していること、戦隊ヒーロー素人の筆者は今日まで知りませんでした。涙袋がぷっくりして、瞳がキラキラ輝き、かわいすぎます! 10代のころののんさんを彷彿とさせる輝きです。
それにしても、1作品でふたりもスターを輩出しているなんてとんだお宝作品だったのですね、『トッキュウジャー』。
さて、自分の列車を攻撃された悪役はレインボートレインに敵意を剥き出しにしますが、志尊さんが「俺も見たい!」と後ろから突撃し、ふたり揃って列車から地面に落ちます。そして悪役、「貴様は引っ込んでろ!」と容赦なく丸腰の志尊さんの顔をグーで殴るのです。いきなり殴った、悪役が、丸腰の人間を……普通にカッとなって殴るんだ、人間を……と、ここからどんどん引き込まれてしまいました。
そしていよいよ、レッド以外のトッキュウジャーが登場します。とほほキャラなブルーとピンクがコメディ要素で盛り上げるなか、志尊さんはというと、やっぱり丸腰のまま悪役に蹴りを入れ、「引っ込んでろと言っただろうに!」と彼方へ吹っ飛ばされてしまいます。
その後、志尊さんと素顔の4人が一同に介する中、浮かび上がるのは志尊さんの清々しいほどのピュアな演技。とにかく明るく、大人でありながら違和感なく童心をにじませる演技力は、さすがエリートです。トッキュウジャーへの変身の仕方を教えてもらわずに敵地に乗り込み、「あれ? どうやってなるんだっけ?」とカメラに向かってボケるシーンは、間も完璧。思わず悪役も無言で頭をしばきます。現在筆者が持っているイメージ、「裏がありそうなイヤな奴」も、演技力の賜物なんだと気づくに至りました。
それはそうと……横浜さんの問答無用のかっこよさよ! 片方の口角をあげるキザな微笑みも、ひとりクールな振る舞いも、相反するぷっくりとしたかわいらしい涙袋も、グッと肘を曲げてポーズを決める変身シーンも、立ち姿も、どこを取っても魅力的! ついつい横浜さんに目が行ってしまいます。
こんなにビジュアルが際立っているのに、単なるイケメン俳優というイメージがないのは、女性向け恋愛ドラマのイケメン役以外にも、『流浪の月』や『春に散る』、『ヴィレッジ』、最近では『正体』など、生々しい役や血汗ほとばしるバイオレンスな役にも没頭するポテンシャルが、当時からあったからではないでしょうか。
ご本人は本作終了後、仕事がなくなり悩んだ時期があったことを2023年8月15日付け『東洋経済オンライン』で語っていますが、トッキュウ4号から現在NHK大河ドラマ『べらぼう』で主演を張るに至るまでの横浜さんをなぜ追ってこなかったのか、悔やまれてなりません。当時から注目していたであろう戦隊ヒーローファンの方々がうらやましいです。
志尊さんに注目するはずが横浜さんにも目を奪われてしまいましたが、とにかく戦隊ヒーローのキャスティング担当さんのトレジャーハンターっぷりには脱帽します。ピュアな姿を見せる志尊さんとクールな表情がかっこいい横浜さんの姿を楽しめる『烈車戦隊トッキュウジャー』、第1話の時点でぐいぐい引き込まれる名作でした。