■結末が賛否両論を呼んだ『ニセコイ』

 古味直志氏のラブコメ漫画『ニセコイ』は、アニメ化はもちろん実写映画化もされている人気作だ。本作では、偽の恋人と本当に好きな人との間で揺れる主人公・一条楽の姿がコミカルに描かれる。

 楽は地元で有名なヤクザの元締め「集英組」組長の一人息子。本人はいたって普通の男子高校生で、小野寺小咲という同級生に想いを寄せていた。しかし、集英組は敵対するギャング「ビーハイブ」との和解を考えており、そのため楽は相手方のボスの娘・桐崎千棘と恋人同士になることを強制されてしまう。

 楽と千棘は相性が最悪で喧嘩ばかりだが、偽の恋人として演技を繰り返すうち、距離が縮まりお互いを意識するようになっていく。本作はそんな2人の関係性の変化を楽しむ作品でありながらも、小咲の人気が極めて高く、彼女を「正ヒロイン」として推す声も少なくなかった。

 実際、公式のキャラクター人気投票では、第1回、第2回と小咲が第1位になっている。その一方、第3回は千棘が1位と、ヒロインの人気レースは最後までデッドヒートを繰り広げていた。

 最終的に楽が選んだのは千棘だ。「偽物の恋が本物になった」という作品のタイトルを回収する意味では、自然な流れに見える。しかし、小咲には「両想い」、「楽が幼い頃から待ち望んでいた『約束の女の子』の正体」、「ファンからも人気が高い」というアドバンテージがあったために、この結末に対しての反応は賛否両論であった。

 小咲は圧倒的な人気を獲得しながらも、楽とのすれ違いシーンが多く、何かと不憫になりがちな「負けヒロイン」になってしまった。しかし、彼女のおかげで、最後までどうなるか分からないハラハラドキドキ感が演出されたともいえるだろう。

 

 複数のヒロインが登場するラブコメ漫画では、「メインヒロイン交代劇」と呼ぶべき展開が描かれることも少なくない。

 その結末に対してはさまざまな意見があるが、そうなるのもヒロインたちがそれぞれ魅力たっぷりだからこそだろう。

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