
原作:大場つぐみ氏、作画:小畑健氏による漫画『DEATH NOTE』(集英社)は、アニメ化はもちろん、実写化も何度もされている人気作品である。本作では、名前を書くだけで人を殺せる「デスノート」を巡って、さまざまな人間模様が展開されていく。
このノートを手にした主人公・夜神月は、自らが新世界の神になるとまで豪語し、目的を果たすため保身に走ってしまうところもある。自分にとって邪魔な人間は殺す……その容赦のなさから、主人公にもかかわらず「ゲスキャラ」と評されてしまうこともある。
さて、本作に登場するゲスキャラは月だけではない。テーマがテーマだけに作中ではいろいろな欲望が渦巻いており、信じられないような行動をとるキャラも少なくないのだ。
※本記事には作品の内容を含みます
■一瞬の登場なのに強烈すぎた渋井丸拓男
最初に登場した印象深いゲスキャラといえば、渋井丸拓男だ。この名前を聞いても、すぐにはピンとこない人も多いかもしれない。それもそのはず、登場して早々月によってデスノートの実験台にされ、あっけなく死んでしまったからだ。
渋井丸は月が予備校から帰る道中、バイクに乗って集団で現れる。周りの迷惑などお構いなしといった様子で、まるで暴走族のような感じだ。
おまけにたまたま見つけた美女に目をつけると執拗に絡み、「俺 渋井丸 拓男 略してシブタク」といった笑えない自己紹介までするので、かなりイラッとさせられた。
絡まれた美女は何もできず、助けようとする人間も現れない。そこで月は、デスノートの実験台に渋井丸を選択することに……。月は渋井丸の名前の漢字表記が分からなかったものの、ノートに考えられる漢字の組み合わせで渋井丸の名前を書くと、そのうちの1つが的中。渋井丸は逃げ出した美女をバイクで追う途中、トラックと衝突して死亡してしまった。
ほんのわずかの登場シーンしかないのに、あそこまで印象を残したモブキャラも珍しい。それだけ絶妙にイラつかせられるようなキャラだった。とはいえ、月にノートの実験台として適当に目をつけられて殺されたことは気の毒だし、後で登場する数々のゲスキャラたちに比べれば可愛いものかもしれない。
■すべての行動がゲスすぎた火口卿介
次はデスノートを悪用したゲスキャラを紹介しよう。それが巨大企業・ヨツバグループの社員である火口卿介だ。
火口はデスノートを使って、企業や政界を意のままに操ろうともくろんでいた。全ては自分のためだ。そんな火口の行動を見ていた死神のレムは、月の方が世の中を変える信念があるだけましだと思っていた。
そして、火口の欲望がむき出しになったのが、死神の目を持つ第二のキラ・弥海砂(ミサ)を妻に迎えようとした時である。彼女が自分のものになれば、怖いものは何もない……。そう確信して、ミサを都合良く利用しようと考えていたのだ。結婚したら、ミサに多額の保険金をかけようとしていたところもゲスい。
しかしその後、自らが第三のキラ(ヨツバキラ)だということが暴かれそうになり、窮地に立たされる。そこでも、かなりの悪あがきをしてゲスっぷりを披露してくれた。
自分の正体をバラそうとした者を殺すために死神の目の取引をした後、自動車で爆走して白バイ隊員に速度違反で止められた火口。すると、白バイ隊員を死神の目で見てノートに名前を書き込み事故死させてしまうのだ。
保身のためだけに無関係の人間を殺した火口だったが、最終的には記憶を取り戻した月によって消されてしまう。月への疑いを逸らすための駒に過ぎない存在ではあったが、そのゲスっぷりは月を上回ると思った。