
テレビアニメ『キングダム』の第5シリーズが終了してから1年が経った。「黒羊丘の戦い」が終わり、次の展開を心待ちにしているファンも多いだろう。
さて、本作では飛信隊をはじめとする秦軍は強大ながらも、劣勢に立たされる場面が多い。そのような状況下では、どうしても兵士たちの士気も下がってしまうものだ。
だが、そんな時、軍を率いる武将たちが檄を飛ばして瞬時に士気を高揚させていく描写は非常にカッコいい。武将ではないが「合従軍編」での秦国大王・嬴政の檄により蕞の民兵が覚醒した場面は、魂が震えるほど最高潮に盛り上がったものだ。
そこで、アニメ第5シリーズまでの原作において、劣勢な状況の中、秦軍武将たちの檄一つで最高に士気が上がった名シーンを紹介していこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■「全軍前進」脱走兵が千人を超える中、士気を上げた! 王騎の激
王騎が総大将となった「馬陽の戦い」では、秦と趙が激突した。趙軍の侵攻により馬央が陥落し、馬陽が包囲される中、王騎は10万を率いて援軍に向かうのだ。
そのころ、女性・子どもも含めた民間人が馬央で虐殺されているという情報が秦軍に伝わり、先行していた歩兵たちは不安に駆られ、3日間で千人を超える脱走者が発生。秦軍の士気は著しく下がっていた。
当時は百人将だった主人公・信もそれを危惧し「助けを待ってる馬陽を解放してやるんだ 分かったか!!」と檄を飛ばすが、まだ彼の立場ではほかの部隊の士気を高めるにはいたらなかった。
そこに後方から登場したのが、王騎の騎馬隊だ。地平線を埋め尽くすほどの大軍を率いた王騎は「ンォフゥッ」「ココココ」と独特の不敵な笑みを浮かべながら左腕を高く上げて前に掲げ、「全軍」「前進」と力強く命じる。
そのたった二言で、さっきまで不安そうにしていた歩兵たちの表情は一変。士気は最高潮に達し、叫び声を上げて前進していく。さも当たり前かのように「ンフフフフ」と前方を見据える王騎の堂々たる佇まいは圧倒的で、シビれてしまったものだ。
そしてこの檄のあと、信は「飛信隊」の名を王騎に授けられ、別動隊として敵将・馮忌を討ち取ることに成功している。
■「この蒙武軍は無敵である!!」楚の大軍相手に士気を高めた蒙武の檄
「合従軍編」の15日目、楚の総大将・汗明と秦の将軍・蒙武が激突した。楚軍は汗明と第二軍の将・媧燐を合わせて12万の大軍、対する蒙武は騰との連合軍で7万と兵力では劣勢であった。
蒙武は三千人将・壁ら将校たちに「俺の号令に従い全力で戦え」とだけ告げ、戦術を明かしていなかったため、将校たちは不安を感じていた。なんといっても、相手は超大国・楚の大軍。汗明も猛将であるため、何か策がないと勝てるはずもない。
しかし、両軍が対峙した際、蒙武は大きく息を吸い込み、大地が震えるほどの大声で「俺が全中華最強の男蒙武だ!!」と吠える。
続いて「この俺を止める者など天下に存在せぬ」「楚将 汗明よ」「貴様の頭はこの蒙武自ら叩きつぶす」「最強の男が率いる軍勢も最強だ」「この蒙武軍は無敵である!!」と、さらに大檄を飛ばすのだ。自分の強さを誇示するだけの言葉であったが、それに応えるように大声を張り上げる兵士たち。壁も体が熱くなるほど高揚しており、楚軍へ突撃していった。
蒙武の檄に鼓舞された壁軍は、そのまま腕力で楚軍の前線を突破する。これに対応するため汗明は5千の兵を送り込むのだが、その隙を突いて蒙武の「斜陣がけ」が炸裂。戦局を大きく動かした。
汗明の太鼓による檄も印象的だったが、劣勢な状況下の中、士気を高めた蒙武の檄は一枚上手だったといえるだろう。