
漫画作品には、「えっ、誰!?」と、思わず二度見してしまう衝撃のビジュアルチェンジを遂げるキャラクターが登場する。
性別が変わったり、巨大化したりとビジュアルの変化パターンはさまざまだが、なかでも整った顔立ちや中性的な美しさで読者を魅了してきた「美形キャラ」が、まるで別人のような“怪物の姿”へと変貌する展開はインパクト抜群だ。
今回は、そんな衝撃の「怪物化」を遂げたキャラクターたちを紹介していく。なぜ彼らは美しい姿を捨てて怪物となってしまったのか……その衝撃の理由や象徴的な変身シーンを振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■妖艶なる蠍の女王、怒りで怪物に『HUNTER×HUNTER』ザザン
最初に紹介するのは、冨樫義博さんの名作『HUNTER×HUNTER』より、「キメラ=アント編」に登場する「ザザン」だ。
ザザンはサソリ型のキメラ=アントでありながら、見た目は妖艶な美女そのもの。長くウェーブのかかった髪に切れ長の目、そしてビキニスタイルが際立つグラマラスな体型。異形の存在でありながら、圧倒的なセクシーさで読者に強烈な印象を残したキャラである。
女王アリの死後は自らを「新たな女王」と称し、流星街を拠点に独立。毒針を用いた能力「審美的転生注射(クィーンショット)」で人間を異形の怪物へと変え、強制的に自らの配下に組み入れ勢力を拡大していき、ファッションもより刺激的なコルセット&マイクロビキニといった服装に。
そんな美しいザザンが怪物の姿をさらけ出したのが、流星街に現れた幻影旅団との戦いであった。フェイタンとの激戦のなか、顔に傷を負わされると「おのれぁぁああ よくも私の顔にキズをおおおお」と怒りを爆発させ、自ら尻尾を引きちぎり変身。一転、巨大で醜悪な怪物形態へと変貌。華奢な体は筋肉がムキムキになり、口はワニのように大きくなり、キバの隙間から青い舌がのぞく、美女からは程遠い姿に……。
武器を通さない硬質化に加え、冷静にオーラ攻撃を繰り出すなど高い戦闘能力を誇ったが、最終的にはフェイタンの必殺技「許されざる者(ペインパッカー)」「太陽に灼かれて(ライジングサン)」により焼き尽くされ、壮絶な最期を遂げることになった。
キメラ=アント屈指の美形キャラだったザザン。性格はきついが、セクシーな服装や、ネイルアートを施していたりと女性らしさも前面に押し出されていたからこそ、あまりの変貌ぶりに驚いた読者は多かっただろう。
■美をとるか、力をとるか『ドラゴンボール』ザーボン
続いて紹介するのは、鳥山明さんの不朽の名作『ドラゴンボール』より、「フリーザ編」に登場するフリーザ軍の側近・ザーボンだ。
エメラルドグリーンの肌に整った顔立ち、流れるような三つ編みとイヤリングを身に着けた姿は、戦士というよりも貴族のような風格すら感じさせる。美に対するこだわりも相当で、自他ともに認めるナルシストのザーボンは、ブルマからも「あ…あのおカオからすると正義の味方じゃないかしら…!?」と勘違いされるほどのイケメンキャラだ。
そんな彼が本性をさらけ出したのは、ベジータとの戦闘で追い詰められたときである。「わたしの真の力を目覚めさせてしまった…」という言葉とともに、美しさをかなぐり捨てて変身。イボガエルを思わせる醜悪な風貌へと一変、全身の筋肉が膨れ上がった“怪物形態”となり、戦闘力も一気に跳ね上がった。
ザーボン自身「美を好むわたしには、それ(変身後の姿)がたえられない」と語っていたように、この変身は彼にとって最終手段だった。しかし、この姿と「フリーザさまも変身型の宇宙人だと言っておられた……!」というセリフが、のちに登場するフリーザの“変身能力”を示唆する伏線としても機能しており、読者の想像力を大いに刺激するものとなった。
この変身によって一度はベジータを瀕死状態に追い込むものの、サイヤ人の「復活による戦闘力上昇」の特性を見誤り、再戦時には腹を貫かれ絶命することとなる。
なお、漫画『ドラゴンボール超』(原作・鳥山明さん/作画・とよたろうさん)にも、ザーボンと同族と思しき美形キャラ「ユズン」も登場し、同様の変身能力を披露していた。