■美しきカリスマ首謀者『臨床犯罪学者 火村英生の推理』長谷川京子

 2016年放送のドラマ『臨床犯罪学者 火村英生の推理』(日本テレビ系)で、長谷川京子さんはカリスマ的な過激派テロ組織の指導者・諸星沙奈江を演じた。これまでのイメージを覆す“知性と残忍さを併せ持つ女首謀者”を演じ、視聴者に鮮烈なインパクトを与えた。

 本作は、斎藤工さん演じる犯罪社会学者・火村英生と、窪田正孝さん演じる推理作家・有栖川有栖のバディが、数々の難事件に挑むサスペンスだ。

 全編を通して、彼らと「シャングリラ十字軍」との対決が描かれているのだが、沙奈江は、その組織を導く美しきカリスマであり、火村の内面に潜む“闇”に共鳴する危険な存在でもあった。

 長谷川さんはこの役について、「犯罪組織の首謀者という、いままでにない役をいただき、とても新鮮な気持ちです」と語り、「自分の価値観や先入観にとらわれず、広く考えて役作りしていきたい」と意気込みを見せていた。

 その言葉どおり、沙奈江は妖艶さと知略を併せ持ち、火村の内面に静かに侵食していく。その関係性は、まさにシャーロック・ホームズとモリアーティ教授のようだった。

 そして、ついに最終話「ロジカル・デスゲーム」で火村と諸星は直接対決をする。毒入りワインを用いた心理戦を繰り広げるも決着がつかず、ついには火村を断崖絶壁へと誘い、銃を手渡し「引き金を引いて こっち側に来て」と自分を殺すよう迫るのだ。その姿は非常に恐ろしく、長谷川さんの新たな一面を見ることができる。

 

 美しさや知的なイメージで親しまれてきた女優たちが猟奇的な犯人役に挑んだとき、そのギャップは見る者の心に強烈な印象を残す。今回紹介した3人の女優もそうだ。従来のイメージを大胆に裏切り、残忍で狡猾な「悪」を見事に演じ切っていた。

 彼女たちの怪演は、ただ恐ろしいだけでなく、そこに人間の複雑さや哀しみすらも感じられる。だからこそ、観客の記憶に深く刻まれるものだったのだろう。

 今後も、こうした“裏の顔”を垣間見せる女優たちの演技に、私たちは魅了され、震え続けることになりそうだ。

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