■宇宙の闇に消える無情の射撃ミス
最後は『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』より、そのミスが生死を分けた、まさに“痛恨の射撃ミス”となってしまったノルバ・シノを振り返りたい。
第45話「これが最後なら」にて、アリアンロッド艦隊と激しい戦いを繰り広げる鉄火団は、ダインスレイヴ隊の一斉掃射を受けて甚大な被害を被ってしまう。窮地を打開するために名乗りを上げたシノは、艦体率いるラスタル・エリオンの旗艦に対して、一撃必殺の奇襲作戦を提案するのである。
鉄火団の輸送艦ホタルビの損傷による煙に隠れ、ガンダムフラウロスで一発限りのダインスレイヴを構えるシノ。ラスタルがいる戦艦のブリッジを正面に捉えると、仲間の想いを乗せた運命の一撃を放つ。
この直前、周辺の宙域で戦闘をしていたアリアンロッド艦隊所属のジュリエッタ・ジュリスがシノの射撃をいち早く察知し、ジュリアンソードをダインスレイヴの砲身めがけて投げていた。
このジュリエッタの妨害を受けたことでダインスレイヴの射角はわずかにずれ、シノの渾身の一撃は無情にも戦艦のブリッジをかすめながら、宇宙の闇に消えていくのである。
「ちくしょおおお!!」と涙ながらに絶叫するシノは、艦体の激しい砲撃にさらされながら無念の最期を迎えてしまうのだった。
この一撃が決まっていれば艦隊の指揮系統を崩壊させ、鉄火団は戦況を大きく覆すことができたかもしれない。ジュリエッタによる執念の妨害はシノの命を散らし、『ガンダム』シリーズ屈指の悲劇的な射撃ミスとして、視聴者にも強烈な印象を残した。
名だたるエースパイロットたちでも起こしてしまう痛恨の射撃ミス。ダリルのように予期せぬアクシデントでその射撃を外してしまった者もいたが、命をかける戦場においては何があろうと「当たらなければどうしようもない」のである。
視聴者としても思わず「あっ……!」と声を出してしまう痛恨の射撃ミスシーンは、これからも物語の展開と視聴者の感情を大きく揺さぶっていくのだろう。