
現在放送中のテレビアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』にも登場した、『ガンダム』シリーズが誇る人気キャラ「シャア・アズナブル」。彼の有名なセリフの一つに「当たらなければどうということはない!」というセリフがある。これはシャアが射撃を避ける側として発したセリフだが、逆に撃つ側の立場で考えた場合、どうだろうか。 そう、「当たらなければどうしようもない」のである。
これまで『ガンダム』作品では数々の名パイロットが登場してきたが、「当たらなければどうしようもない」という射撃ミスにより、戦局が大きく揺らいでしまう場面がいくつもあった。
今回はその中でも特に印象に残った、痛恨の射撃ミスシーンについて振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■ニュータイプがゆえに勝負を決めきれない虚しき射撃ミス
『機動戦士Zガンダム』のクワトロ・バジーナは、優れたパイロットであるがゆえに射撃を外してしまうという、皮肉な戦闘がいくつか描かれたキャラでもある。
第10話「再開」では、長距離狙撃兵装である「メガ・バズーカ・ランチャー」を初めて手にしたクワトロが、パプテマス・シロッコが搭乗するメッサーラを照準に捉える。しかし、シロッコの放つ強烈なプレッシャーを感じ取ったがために、射撃のタイミングがわずかに遅れ、メガ・バズーカ・ランチャーを外してしまうのだ。
第32話「謎のモビルスーツ」でも巨大な戦艦ドゴス・ギアに対して砲口を向けるが、同じくシロッコのプレッシャーを感じ取ったことで一発目を外してしまう。同話では計4発のメガ・バズーカ・ランチャーによる射撃が行われたが、いずれもカタパルトを損傷させただけで撃沈にはいたらなかった。
クワトロは、敵の重要人物であるシロッコを何度もその照準に捉えてはいたものの、結局仕留めることはできず、戦いはもつれてしまう。
第38話「レコアの気配」では、レコア・ロンドが搭乗する戦艦アレキサンドリアに向けて発射するが、逆にレコアがクワトロのプレッシャーを感じ取り、素早い回避行動を取られたことで外れてしまう。この射撃をきっかけにアレキサンドリアとモビルスーツ部隊に後退されてしまい、十分な成果を挙げるには至らなかったのだ。
当然、メガ・バズーカ・ランチャーで敵を仕留めるシーンもいくつかあったが、これらの射撃ミスがあまりに痛恨であったことから、「クワトロのメガ・バズーカ・ランチャーは外れがち」というイメージを抱いてしまった視聴者も多いのではないだろうか。
ニュータイプであるがゆえに、プレッシャーを感じて射撃の集中力を乱され、自分の気配もまたはるか彼方の敵に察知されてしまう。宇宙世紀の戦いは、決して兵器の威力に依存しないという奥深さも象徴する射撃シーンであった。
■稲妻がもたらした運命的な射撃ミス
『機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY』に登場したジオン軍所属のダリル・ローレンツは、誰もが予期せぬ形で痛恨の射撃ミスをしてしまう。
スペースコロニーや撃沈された戦艦の残骸がぶつかり、帯電したデブリ(破片物)によって雷が鳴り響く「サンダーボルト宙域」での悲惨な戦いを描いた同作。
サイボーグ化された兵士で構成される「リビング・デッド師団」のエーススナイパーである両足義足のダリルは、連邦軍のイオ・フレミングを因縁の相手として狙っていた。そしてイオとの再戦で、同胞のフィッシャー・ネスに凶刃を向けるイオのフルアーマー・ガンダムを、ダリルは的確に照準に捉える。
だが、イオの索敵範囲外である、はるか彼方から放ったビームが直撃寸前まで迫ったそのとき、強烈な稲妻が射線に割り込んだことで、ビームの軌道が曲がってしまうのである。まばゆい閃光と共に捻じ曲げられたビームは虚空へと消え、ダリルは射角を察知されたことでイオの接近を許してしまう。
結果的に懐まで潜り込まれたダリルは、イオにビームサーベルを突き立てられ、左腕を失う重傷を負う。
すでに両足を失っているダリルにとって、左腕まで失ったことはさらなる絶望であったが、皮肉にもこれがサイコ・ザクに搭乗するきっかけとなる。
命令を受け右腕までも切り落とし、四肢をすべて義肢にすることで操ることができるサイコ・ザクは、ダリルの失った手足よりも自由かつ機敏に動く。そして、かつての五体満足だったころを思い出しながら、歓喜とともにイオへの雪辱を晴らすことに成功するのだ。
運命的な稲妻がその射撃を阻み、絶好の機会でイオを仕留めることはできなかったダリル。しかし、標的が自身に向いたことでフィッシャーの命は救われ、左腕を失ったことでサイコ・ザクに搭乗するようになった。
稲妻がもたらした痛恨の射撃ミスはダリルにとって救いとなったのか、それとも戦場に縛り付ける新たな呪いとなったのだろうか。