■アムロの奇襲“置きバズ”を二度も回避
アムロの戦術の一つに、「置きバズーカ」と呼ばれるトラップがある。
これはバズーカをあらかじめ設置しておき、遠隔操作で発射して敵を仕留めるというもの。単なる爆弾トラップとは異なり、アムロは数秒後に敵が通るであろう位置を正確に予測し、バズーカの向きや角度を調整。その場を離れた後、完璧なタイミングで引き金を引く。ニュータイプの直感と洞察力を極限まで活かした、大げさに言えば未来予知に近い戦法だ。
実際、ギュネイを仕留めた際も「置きバズーカ」の応用を用いている。投げ捨てたバズーカを囮にしてギュネイの意識を引きつけたうえで隙を突き、ビーム・ライフルでヤクト・ドーガの背部を撃ち抜いた。
そんな初見殺しともいえるアムロのバズーカトラップを、『逆襲のシャア』の劇中でシャアは二度も回避している。
一度目は物語終盤、アクシズ周辺での戦闘。アムロは逃げたふりをして「置きバズーカ」を仕掛ける。サザビーの腹部メガ粒子砲がデブリを削り、舞った破片による視界不良の状況下で、アムロは絶妙なタイミングでバズーカを発射。しかしシャアは、一瞬驚いた表情を見せつつも、ニュータイプの閃きを発動し、左腕のシールドを犠牲にすることで回避してみせた。ちなみに、その速すぎる反応に、仕掛けたアムロも「避けた!?」と驚愕する。対するシャアもこの攻撃には相当危なかったのだろう「それでこそ私のライバルだ!」と興奮を隠せないでいた。
二度目の「置きバズーカ」はさらにすごい。アクシズ内部での戦闘、つまりアムロは生身の戦闘でも「置きバズーカ」を用いた。アムロはアクシズの内部の狭い通路の死角、曲がり角にバズーカを設置。シャアが通過するタイミングでワイヤーを引いて発射したが当たらなかった。
アムロがミスをしたのか? いや映像をよく見ると、シャアはバズーカが設置された方向に顔を向けつつ反対側の壁を伝っており、発射の際も立ち止まらず素早く通過している。つまり、シャアはアムロのバズーカトラップを予測し対応したからこそ、回避できたのだ。
戦闘の天才アムロが仕掛けた奇襲を二度も回避したシャアの対応力は、やはり尋常ではない。生身の戦闘にまで「置きバズーカ」を利用するアムロも凄まじいが、それを察知して回避するシャアもまた、並の兵士とは一線を画していた。
『逆シャア』では、自ら開発したサイコフレームの技術を相手にリークしてまで、アムロとの全力勝負にこだわったシャア。結果的にアムロに敗れたものの、その戦いぶりは圧巻だった。シリーズ最強と称されるアムロを相手に、ギリギリまで互角に渡り合えたのもシャアだからこそ。敗北の果てにアムロとともに消息不明となったシャアだが、その超人的な戦闘技術は本物だった。