
『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイは、力強い初陣を皮切りにその後のエピソードでニュータイプとしての才能を目覚ましく開花。立ちはだかるジオン公国軍のMSを次々と撃破していった凄腕パイロットだ。歴代シリーズの主人公の中でも「最強」と語り継がれるほどの戦闘能力の持ち主で、各エピソードではその圧巻の戦いぶりが描かれている。
一方、そんなアムロとたびたび比較されるのが、シャア・アズナブルだ。彼もまた、ジオンを代表する優秀なパイロットだったが、アムロの飛び抜けた才能を前に、時に過小評価されることもあった。だが、アムロのライバルとして最後まで互角以上に渡り合ったシャアの操縦技術は、十分に驚異的なものだったのは事実だろう。
今回は、2人の最終戦となる『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の戦闘シーンを振り返り、シャアの凄さを再確認していきたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■当然のようにやってのけたビーム・ライフルの神業
まずは物語冒頭、アムロのリ・ガズィとギュネイ・ガスのヤクト・ドーガが交戦する場面。アムロの放ったビーム・ライフルが、ギュネイの機体に命中しようとしたその瞬間、横からシャアのサザビーがビーム・ライフルを放ち、見事に相殺。ギュネイを救ってみせる。
シャアは当然のようにやってのけたが、この技の難易度は常軌を逸している。たとえるなら、空中に浮かぶボールを目掛けてピッチャーが別のボールをぶつけて弾き飛ばすようなもの。人間業とは思えない。
そもそも実弾よりはるかに速いビーム・ライフルが発射された瞬間に、目視して狙いを定めたのでは到底間に合わない。シャアは高度な操縦技術と空間把握能力を駆使すると同時に、直感的な読みをもって、この離れ業を成し遂げたのだろう。
■ファンネルの動きが違う!シャアのオールレンジ攻撃
『ガンダム』シリーズには、遠隔操作によるオールレンジ攻撃を可能にする「ファンネル」という武器が存在する。『逆襲のシャア』でも、ニュータイプや強化人間たちがこのファンネルを駆使し、激戦を繰り広げた。しかし、その運用には個々の能力が色濃く反映される。
たとえば、ギュネイ・ガスが搭乗したヤクト・ドーガのファンネルは、アムロのフィン・ファンネルに迎撃され、足止めすらできなかった。一方、クェス・パラヤが乗るα・アジールのファンネルは、最終的にνガンダムのIフィールド・バリアを展開させるなど奮闘したものの、はじめはアムロにビーム・ライフルだけで軽くいなされていた。
その中で、やはりシャアのサザビーのファンネルは別格だった。
アクシズに放たれた核ミサイルの迎撃では、サザビーのファンネルを駆使し、第一陣のミサイルをほぼ全て叩き落としている。そして、アムロのνガンダムとの戦闘では、互いのファンネル同士が独特のキビキビした動きで撃ち合い、さらにモビルスーツ本体もビーム・ライフルで牽制し合うという、尋常ではないレベルの攻防を展開した。
一年戦争では、有線式ながらジオングのオールレンジ攻撃を使用していたものの、クワトロ・バジーナを名乗っていた『Zガンダム』時代の愛機は百式。ファンネルを備えた機体に乗ることはなかった。
それが再びシャアとして登場した『逆襲のシャア』では、完全にファンネルを使いこなしていた。さらに、サイコフレームというサイコミュ操作や操縦補助を担う革新的技術を自ら採用した点も見逃せない。シャアの強さは、時代とともに進化し続けたのだ。