■実はストーリーには欠かせない重要人物だった「ベルナール」

 ベルナールは新聞記者でありつつ、“黒い騎士”として貴族から盗みを働いていた人物だ。彼は貴族に捨てられた母を持ち、絶望した母から無理心中未遂を図られるといった壮絶な過去を持つ。そのため、当初は貴族であるオスカルに対し敵意をむき出しにしていた。

 しかし負傷した自分を看病してくれたロザリーと距離を縮め、オスカルとの対話を通して自分の偏った考えに向き合っていく。

 ベルナールは、オスカルの生き方や信念に大きな影響を与えた人物だった。そのうえオスカルにとって本当の妹のような存在であったロザリーと結ばれ、アンドレが“黒い騎士”として変身する際には、髪を切ることでその大きな変化に一役買っている。

 そう考えるとベルナールは物語を作るうえでは欠かせない存在であり、ストーリー全体の転換期を作った人物であった。

 悲恋が多かった本作において、ベルナールとロザリーは数少ない幸せを掴んだカップルだ。境遇も似ている2人は、今後もきっと互いに愛し合い、支え合いながら日々を送っていくことだろう。「普通の幸せ」を与えてくれるベルナールは、本作において尊い存在であると思う。

■アントワネットを愛する心はフェルゼンより深い!?「ルイ16世」

 最後に、見た目こそサブキャラだが、アントワネットの人生に大きくかかわったルイ16世を紹介したい。

 フランス国王の彼はアントワネットの夫だ。登場当初からやや小太りでシャイな性格であり、アントワネットも第一印象を「この人がわたしの夫……? この…どろんとした目の……この人が…」と、不満を述べている。

 しかしルイ16世は出会った頃からアントワネットのことを一途に愛しており、彼女の気持ちがフェルゼンにあってもそれを黙認していた。2人の関係を密告する手紙に涙しつつも、アントワネットに対し「あなたが女としての幸福をもとめるのを どうして非難することができるだろうか………」と、彼女の気持ちを一番に思いやっている。

 そんなルイ16世は最後まで立派な国王としての職務を果たし、家族を守るようにして断頭台に立つ。「わたしの血が祖国フランスの幸福の礎とならんことを!!」その思いのもと処刑されたルイ16世は、最後まで立派な夫、父親であった。

 もしもアントワネットが彼の愛情の深さや、実は頼りある男性だということに気づけていたら……フランスの運命はもしかしたら変わっていたかもしれないと、思いを馳せてしまうのだ。

 

 『ベルサイユのばら』の人気男性キャラといえば、やはりアンドレやフェルゼンという声が多いだろう。だが、こうして見てみると作中には実に魅力的な男性が多く登場している。

 彼らはオスカルに想いを寄せながらも報われなかったり、物語の途中で出番が減ったりしているが、それぞれが物語に欠かせない存在としてストーリーに大きな影響を与えているのは間違いないのだ。

 あなたにとっての『ベルばら』のいい男は誰だろうか。大人になって読み返してみると、当時とは違うキャラクターに惹かれてしまうかもしれない。

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