
今も昔も話題に事欠かない、アニメや漫画の実写化作品。原作ファンにとっては、作品やキャラクターがどんなふうに再現されるのかが気になるところであるが、なかには作品自体の「クセの強さ」ゆえ、強烈なインパクトを残したものも存在する。
公開当時は賛否両論を巻き起こした作品もあるが、今、見返してみると「攻めすぎ」とも言える思い切った設定や演出、豪華なキャスティングなど、どれもインパクト抜群の作品ばかりで驚かされてしまう。
今回はそんな「クセ強実写化作品」たちを振り返りつつ、原作の世界観を再現するために制作スタッフが施した工夫の数々を見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■ボールから炎が…「テニヌ」ぶりも再現!『テニスの王子様』
1999年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が始まった、許斐剛さんの『テニスの王子様』。本作は『テニプリ』の略称で親しまれ、アニメ化やミュージカル化など、現在までにさまざまなメディアミックスがされている人気作である。
本作は“テニスの皮を被ったバトル漫画”、いわゆる「テニヌ」と呼ばれていることでも有名だ。連載当初は競技としての「テニス」が描かれていたが、途中からは現実離れした超人プレイが登場するようになり、バトル漫画のような要素も見どころとなっている。
2006年に公開された実写映画では、その「テニヌ」ぶりまでもが再現されていたことでも話題を呼んだ。
たとえば、ボールを受けた衝撃でラケットが砕けたり、打ったボールから炎や白煙が出たり、ジャンプしながら空中で回転したり……など、通常では考えられないプレイが次々と繰り広げられる。実写化だからこそできる「あり得ない」演出で、プレイヤーたちの強さ、凄さを印象的なものにしていた。
なによりインパクトが大きかったのが、キャラクターの年齢設定だ。
中学3年生の手塚国光役に当時20歳・身長約190cmほどの城田優さん、さらに映画オリジナルのラスボス、エガテ・マクラウド・檜垣には当時30代の川口力哉さんが起用されている。モデルもこなす筋骨隆々の2人の体格や威圧感は、どう見ても中学生のそれではない……。
主人公・越前リョーマを当時15歳の本郷奏多さんが演じていたこともあり、リョーマとの試合はもはや「大人と子ども」のようであった。ちなみに原作の「テニヌ」世界ではプレイヤーが巨大化したりもするのだが、それすらも再現していた……という見方もできるかもしれない。
とはいえ、そんな体格差すらものともせず、強豪たちに果敢に立ち向かうリョーマの姿は非常にカッコ良く、彼の天才ぶりを際立たせる要素になっていたように感じる。
■お色気も丸ごと再現!? 中村倫也の怪演が光る『やるっきゃ騎士』
『やるっきゃ騎士(ナイト)』は、1980年代に『月刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されていた、みやすのんきさんの学園漫画だ。ギャグとともに過激なお色気描写が多いことで知られる本作は、2015年に実写映画化された。主人公・誠豪介を演じたのは中村倫也さんだ。
物語の舞台は「女尊男卑」を校訓とする聖愛学園。女子による女子のための学園に転校してきた豪介が、男子生徒会会長として持ち前のスケベ根性を武器に、横暴な女子勢力に立ち向かう。まさに昭和のお色気学園ものだ。
女風呂を覗いたり、女装をして女子更衣室に侵入するなど、数々の“禁断行為”が描かれる一方、それらがバレると全裸にされ「天誅」の札を股間に貼られるなど、罰の描写も昭和風である。また今となっては懐かしいブルマやスクール水着など女子生徒たちのコスチュームもレトロ感たっぷりで、本作が連載されていた80年代の雰囲気をまるごと再現している。
なかでも中村さん演じる豪介が、「失礼します」と言いながら女子生徒のスカートを次々にめくっていき、決めポーズをとるシーンは衝撃的であった。2018年にNHK朝ドラ『半分、青い。』でブレイクする前の中村さんが、そんな破天荒な豪介を体当たりで演じ切っていることにも驚かされてしまう。
クライマックスでは格闘技ファンにはおなじみのアレクサンダー大塚さん演じる横暴なサイボーグ教師が現れ、豪介は女子生徒たちと力を合わせてスケベをパワーに変えて戦う。昭和のお色気ギャグを平成に持ち込んだ実写化であり、中村さんの芸域の広さが垣間見える一作となっていた。