■自由を求め、自由に敗北した男「ギルド・テゾーロ」

 『ONE PIECE FILM GOLD』(2016年)では、ルフィたちと違った形で自由を手にしようとしたギルド・テゾーロの野望が描かれた。

 世界政府も手出しができない世界最大のエンターテインメント国家「グラン・テゾーロ」の王・テゾーロは、その華々しさの裏で金による人々の支配をおこなっていた。

 幼い頃から極貧の生活を余儀なくされていたテゾーロは、恋に落ちた女性・ステラが天竜人によって買われてしまった経験から、金に対して激しい執着心を抱くようになる。

 また、自らも奴隷として過酷な日々を過ごしていたこともあり、奴隷脱却後にはドンキホーテファミリーから“ゴルゴルの実”を奪って海賊として力をつけ、「グラン・テゾーロ」を築いてからは、自身の過去を否定するかのように力なき者たちを金で支配していた。

 世界の20%の金を掌握しているとされるテゾーロは、その莫大な金を用いて自身の自由を勝ち取っただけでなく、人々の自由までコントロールし「グラン・テゾーロ」を訪れた麦わらの一味からも自由を奪おうとする。

 巧妙な手口で一味を陥れようと画策するが、何にも縛られない自由を掲げるルフィたちの激しい抵抗の前に破れ、国家が崩壊すると共に海軍に拘束されるのであった。

 金がなかったゆえに愛する人を失ったテゾーロは、その後悔と怒りからひたすらに金を無心し、ルフィやロブ・ルッチの言うような“怪物”へと変貌してしまった。実のところ最後まで金に支配されていたのは、テゾーロだったのかもしれない……。

■世界最強を目指し、孤独に宿る強さを証明したかった「ダグラス・バレット」

 『ONE PIECE STAMPEDE』(2019年)に登場したダグラス・バレットは、己の力のみを信じ、孤独という信念を掲げ、ただひたすらに世界最強の称号を追い求めた。

 戦争孤児のバレットは少年兵として過酷な日々を過ごし、裏切りや搾取などの経験を経て己の力だけを頼りに生きてきた。

 やがてロジャー海賊団に出会うと、これまで経験したことのなかったロジャーの強さに憧れを抱く。いつか彼を超えるという野心を抱いてその仲間となるも、ロジャーが処刑されたことで力のぶつけ先を失ってしまう。

 海軍のバスターコールで捉えられたバレットは、インペルダウンの獄中で世界最強の海賊王になる夢を抱き、20年ぶりに脱獄。“祭り屋”ブエナ・フェスタの力を借りて「海賊万博」を開催し、海賊・海軍問わず名だたる猛者を一カ所に集結させ、まとめてせん滅することで世界最強の証明をしようという大胆な計画を実行するのである。

 ロジャーや白ひげ、ルフィが持つ仲間との絆を真っ向から否定し、「この俺の強さは 俺一人だけが勝つためにある!」と一貫して孤独を貫くバレットは、ルフィたち海賊・海軍・革命軍らが共闘した異色のチームと激突することに。

 孤独にこそ力が宿ると信じたバレットだったが、かつて仲間を率いて海賊王になったロジャーがそうだったように、仲間の存在を力に変えるルフィの前に敗北を喫する。

 生まれもっての境遇から、孤独という道を貫くしかなかったバレット。仲間の絆を知る者たちに敵うことはなかったが、その圧倒的な戦闘力でもっとも海賊王に近づいた男だった。

 

 壮大な計画を抱き、麦わらの一味と壮絶な戦いを繰り広げてきた“伝説のジジイ”たち。その計画のどれもが過去の経験をきっかけとしていたことから、さまざまな経験があってこそ芽生えた野心であったようにも思えた。

 これらの“ジジイ”たちの敗北は、新世代の若者たちの力が時代を動かしていくことを象徴していたのかもしれない。

 劇場版の新作の公開がいつになるのかはいっさい不明だが、ルフィが“四皇”まで上り詰めた今、どんな強敵がルフィたちの行く手を阻むのだろうか。原作漫画やテレビアニメも楽しみながら、新たな劇場版作品が発表される日を心待ちにしよう。

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