
宇宙世紀の『ガンダム』シリーズでは、「ニュータイプ」をはじめとする名のあるパイロットたちとの戦闘シーンがフィーチャーされやすい。戦闘において高い操縦技術を持つパイロットが注目されるのは当然のことだが、無名のパイロットのなかにも卓越した技量を持った人物がいても不思議ではない。
実際に『機動戦士ガンダム』の劇中にも名前も知らない……いわゆる“モブパイロット”ながら、思わず「おっ!?」と驚かされるような操縦を披露した者もいた。
そこで今回はテレビアニメ『機動戦士ガンダム』や、その劇場作品において、無名だけど特筆モノの活躍シーンが存在したパイロットたちを振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■ザクとは違う! グフ部隊がアムロを追い詰める
モビルスーツ(MS)「グフ」といえば、有名パイロット「ランバ・ラル」が乗った機体として知られる。だが、第23話「マチルダ救出作戦」ではマ・クベの差し向けたグフの部隊が、アムロのガンダムを追い詰めるほどの奮闘をみせた。
マチルダ中尉が率いる輸送機の部隊は、サブフライトシステム「ドダイYS」に乗ったグフの小隊に襲撃を受ける。ガンダムで応戦するアムロだが、1機のグフが放ったヒートロッドによって捕縛されてしまう。
ヒートロッドの締めつけるパワーは強く、ガンダムシールドがひしゃげるほど。さらに徐々にヒートロッドから放たれる電流のパワーが強まり、アムロを苦しめていった。このときはガンダムのビームサーベルでなんとか難を逃れたものの、そこに別のグフが襲来する。
大きなダメージを負っていたガンダムは、ドダイに乗って空中から攻撃を繰り出す2機のグフに大苦戦。尻もちをついたガンダムにグフがフィンガーバルカンを掃射すると、アムロは負けを覚悟したのか悲痛な叫び声をあげていた。
そこにガンダムの支援メカに乗ったハヤトが到着し、そのおかげでグフの撃破に成功する。だが、グフに乗った無名のパイロットたちの果敢な空中からの攻撃が、あわやガンダムを撃破する寸前まで追い詰めたのだから、やはり称賛すべきだろう。
■ガンダムの攻撃を回避して鮮やかな反撃!
宇宙に上がってからのアムロは、もはやバケモノじみた強さを発揮していくのだが、そんなアムロにあと一歩というところまで迫ったMS乗りがいた。第32話「強行突破作戦」において、キャメル艦隊から出撃した「リック・ドム」に乗る名もなき猛者である。
この戦いでアムロは、MSには目もくれずに旗艦のムサイに攻撃を敢行。艦橋を斬りつけて指揮官であるドレンを戦死させたものの、母艦を失ったリック・ドムのパイロットは動揺するどころか、ガンダムに対して猛攻をしかける。そのときの冷静な判断力と鮮やかな動きは、とても一般のパイロットとは思えないものだった。
ヒートサーベルによる初撃はアムロに読まれて回避されるが、ドムのモノアイのカメラはしっかりとガンダムの動きを追っているのが分かる。回避される未来を予測していたからこその行動だろう。
そしてガンダムのビームサーベルによる突き攻撃を回避すると、がら空きになったガンダムの胴体部に向けてヒートサーベルを見舞う。
しかしアムロの恐ろしい読みは、さらにその上をいく。ガンダムシールドの裏に隠し持っていた2本めのビームサーベルでドムの攻撃を防ぐと、そのまま別のサーベルでドムを貫いたのである。
ニュータイプとして覚醒しつつあったアムロでなければ、このリック・ドムの動きに対応できなかったかもしれない。名もなきパイロットではあったが、おそらくエース級の手練れだったに違いない。