シリーズ開始から25周年を迎え、現在は最新シーズンのseason24が放送中の刑事ドラマ『相棒』。本作は、コミカルなエピソードから後味の悪い重すぎるエピソードもある幅広い作風が魅力の一つだ。
特に、season13の最終話「ダークナイト」は3代目の相棒・甲斐享が犯人だったという最悪の結末を迎え、今でもその後味の悪さは語り継がれている。そこで今回は、初代、2代目、4代目の相棒と杉下右京が解決した後味の悪い「重すぎ回」を振り返っていこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■正義のため苦しむ警察官の姿に心えぐられる「最後の砦」
取調べ監督官という制度を鋭く描いた、season7の第7話「最後の砦」。このエピソードでは、スクーター通り魔事件の容疑者・辻が取り調べ中に急死し、それには刑事・野村の強引な取り調べが関わっているという疑惑が浮上する。
特命係は取調べ監督官の下柳の証言が重要だと考えるが、下柳は強引な取り調べを見たにもかかわらず、問題なしと報告していた。しかし彼は内心では、警察の威信を守るという大義と自分が見た真実の間で、苦悩していたのだった。
そして、徐々に真相に近づこうとする右京と亀山薫の前で、下柳は最悪の決断をする。彼は「告発なんてしたら、仲間を裏切ることになる! 貶めることになる……」と叫び、拳銃自殺をしてしまうのだ。「一体、何のための監督官なんだ!」という下柳の最期の言葉は、取調べ監督官という制度の問題点を鋭く指摘していた。
「強いですね右京さんは……そして正しい……」と亀山が苦しみながらも右京に語り掛けるシーンは、こちらも息苦しくなってしまうほどに重い雰囲気だ。最後は野村が取調べ監督官に任命され、まるで罰を与えられるかのような人事も本当に後味が悪かった。
警察官の威信を守るために隠ぺいする者、命を絶つ者、真実を追求する者……と、正義のために苦しむ警察官の姿が描かれる名エピソードであることには違いない。
■社会問題を鋭く描いた「ボーダーライン」
派遣労働者の問題点を描くseason9の第8話「ボーダーライン」。このエピソードは1人の若者が死亡しているのが発見されるところから始まる。
12月の寒空の下、柴田という男の転落死体が発見され、防御創などから殺人が疑われた。右京と神戸尊が柴田の人生を追っていくと、彼の派遣労働者としての過酷な人生が明らかになっていく。
捜査を続けると彼の人生には「空白の11カ月」があり、その間に派遣切りにあっていたと分かる。その後悪質な業者の下で搾取され、兄には「いい加減に働いてるからだ」と叱責され、恋人からは別れを切り出される……。
やがて、柴田は人生に絶望。彼は名義貸しという犯罪にも手を染め、しだいに追い詰められていく。最後には自分自身に刃物で傷をつけて防御創に見せかけ、事件に巻き込まれたようにしてみずから身を投げたのだった。
このエピソードは重すぎる雰囲気から、相棒ファンの間でも非常によく知られている。貧困ジャーナリズム大賞2011を受賞するなど、貧困のリアリティを伝えたエピソードとして高く評価もされた。『相棒』が単なる刑事ドラマではないということがよく分かる屈指の名エピソードである。


