■序盤はギャグキャラのようだったのに…知力・武力ともに最強クラスの大将軍へと出世した「騰」

 さて、最後は秦の「騰」を紹介したい。騰といえば大将軍レベルの武将なので、オギコとバミュウと並べるのは、少々かわいそうかもしれない。ただ、そんな彼も“天然”の魅力にあふれている。

 作中、王騎軍の副官として騰が初登場したのは第4巻「王弟の反乱編」でのこと。だが、その強さを見せつけるのは、李牧が登場した「馬陽の戦い」における第15巻とかなり後になってからだ。

 軍を率いるようになってからのイメージが強い騰だが、序盤はまさにギャグキャラといえるほど緊張感もなく、不思議な存在だった。特に王騎との掛け合いは見ていて楽しかったものだ。

 たとえば、初登場した「王弟の反乱編」では、右龍の回廊を見に行けない王騎が、騰に見に行くよう指示するのだが、素知らぬ顔で「オーイ 誰か右龍に……」と呼びかけ、「あなたに言っていますよ 騰」と、真顔で言われている。

 その後、再度「騰はいますか?」と呼ばれ、「ハ! ここに」と真後ろから登場するのだが、「……あなた右龍に行ったのでは?」と言われ、「ハ! 今から向かおうかと」と、答えたりもする。他国どころか自国の兵たちも恐怖する大将軍の王騎に対し、あまりにも堂々とした振る舞いである。

 また、修行を付けてもらおうと信が王騎の城を尋ねた際、一度は門を開けるも、なぜか無言でそのまま閉めたり、その後、王騎含め、かなりの人数がいる大浴場でクロールで泳いだりもしている。このように騰は初期の頃は、なんともコミカルで不思議なキャラクターであった。

 王騎亡きあと、騰は残党を率いてその実力を周囲に知らしめていくのだが、そのお茶目な一面はきっちりと残してくれている。時に「ココココ」と王騎の物真似をするし、行き過ぎて「コケコッコ」と言ったりもしている。緊張感の欠片もないのも大物である証なのかもしれない。

 魏との戦いとなった「著雍編」では、得意の剣術である「ファルファル」が「フォル?」や「フェル?」になっていたり、本人まで疑問形になっているのがなんとも面白い。騰は大将軍になっても楽しませてくれそうだ。

 

 さて『キングダム』には、本当に魅力的な武将が多く登場する。戦の描写も多く、死と隣り合わせにあるシリアスなシーンも多いからこそ、紹介してきたような天然キャラの存在には和ませてもらえるものだ。

 2025年10月から、アニメ第6シリーズが始まる『キングダム』。今後もアツい展開を楽しみにしたい。

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