■双子の兄・マーグはいないし合体もしない、原作最終回は全滅エンド?『六神合体ゴッドマーズ』

 最後に紹介するのは、日本テレビ系列で1981年から放送されたテレビアニメ『六神合体ゴッドマーズ』だ。東京ムービー新社(現:トムス・エンタテインメント)が製作したロボットアニメで、地球人として育てられた明神タケル(マーズ)が6体のロボットで戦う物語。すぐれた作画、劇的なシナリオ、美形男性キャラクターを人気声優が演じたことで大きな人気を博した。

 原作は、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で1976年から連載された横山光輝さんのSF漫画『マーズ』だが、アニメ版は変更点が非常に多かった。

 漫画のマーズは異星人が地球を破壊するために作った“人造人間”だが、アニメのマーズ(タケル)はギシン星から地球に送り込まれた“異星人”。また、マーズの守護ロボットはガイヤー(原作ではガイアー)だけなのに、アニメでは6体が合体。さらに、クラッシャー隊の仲間や双子の兄マーグの存在など、違いを数え上げたらきりがない。

 アニメ版が好きだった筆者は当時、原作である『マーズ』を読んで非常に驚いた記憶がある。特にマーグというキャラが好きだったのだが、原作にはマーグなんて人物は登場せず、敵もズール皇帝のような分かりやすい悪役ではなく、「人間の猜疑心」というもの。加えてラストも、裏切られたマーズが地球を道連れに自爆してしまうバッドエンドだった。

 アニメ版では、復活したズールに苦戦するタケルに、皆の(祈りの)エネルギーがゴッドマーズへと届き勝利する。そして亡き父イデアが現れ、宇宙平和を説かれたタケルは、仲間を残して恋人ロゼと宇宙へ旅立つロマンチックな結末となっていた。

 「マーズが死ぬと地球が滅ぶ」や、六神ロボのアイデア以外は原作と大きく異なるが、横山さんはそれを快諾したという。原作漫画が傑作であるのは間違いないが、アニメ版がファンの熱意で映画化されるほどの人気作となったのも、また事実である。

 

 原作とアニメの「違い」に対して、ファンの意見や思いはさまざまだろう。原作ファンであれば、アニメで設定が大きく変化したことについていけないケースもあるだろうし、アニメ版から入ったファンなら、むしろ原作を読んで驚くはずだ。ただ、たとえ設定が変わっていたとしても、原作もアニメもそれぞれの魅力を持っている。原作とアニメは、別のエンタメ作品ととらえるのが一番の楽しみ方なのかもしれない。

 

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