■バッドエンドは2000年代以降の作品にも

 次に紹介するのは、大場つぐみ氏原作、小畑健氏作画の『DEATH NOTE』である。2003年から2006年に連載された本作は、「死神」のノートを手に入れた天才高校生・夜神月が新世界の神を目指すサスペンス作品である。月は「キラ」として犯罪者を裁き続け、一時は宿敵「L」に勝利するも、その後継者である「ニア」との頭脳戦に敗れ、自らが裁こうとしていた罪人として命を落とす。

 どの目線で見るかによって受ける印象は変わるため、その結末には賛否が分かれた。

 続いて、こちらもさまざまな解釈がされている荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』を取り上げよう。1999年から2003年に連載された本作では、空条承太郎の娘・徐倫の活躍が描かれている。

 物語終盤、ラスボスのプッチ神父はとある野望を果たそうとした。それは時を急速に進めることで一度世界を終わらせ、新たな世界を生み出すというもの。その代償として主要人物はエンポリオを除いて全滅したが、彼が神父を倒した後には、再構築された新たな世界で彼らに似た人物たちが平穏な生活を送る姿が。受け取り方によってハッピーエンドともバッドエンドとも解釈できる複雑な結末であった。

 

 最後に紹介するのは、マポロ3号氏の『PPPPPP』である。2021年から2022年に連載された本作は、音楽一家の“落ちこぼれ”であるラッキーが、才能の有無に関わらずピアニストを目指す物語。全員が天才的な音楽の才能を持つ家族との確執や自身の才能の限界に向き合いながら、ピアニストとして成長していく姿が描かれていたが、物語の終盤、ラッキーは自身の中に潜む「天才ラッキー」というもう一つの人格と向き合うことになる。

 この二重人格の設定は、彼の才能と自己認識の葛藤を象徴していたが、最終回では、「天才ラッキー」が表に出る急展開。「家族との和解」「家族での演奏」というラッキーの夢が未達成のまま終わったことに対し、不完全燃焼と感じた読者も多かったようだ。

 

 このように、「友情・努力・勝利」を掲げるジャンプ漫画でありながらも、意外なバッドエンドを迎えた作品は少なくない。しかし、そうやって読者の期待を裏切る形で物語が閉じたからこそ記憶に残り、語り継がれる作品もある。

 最終回に納得できるかどうかは読者しだいだが、これらの作品が長年にわたって話題にのぼること自体が、その衝撃度と影響力の大きさを物語っているのかもしれない。

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