■日常に“ずれ”を感じていた少年の覚悟の出撃「バナージ・リンクス」

 最後に劇場版作品から、『機動戦士ガンダムUC』の主人公バナージ・リンクスの初陣を振り返りたい。本作は、解放されれば地球連邦政府が転覆するとされる「ラプラスの箱」を巡って、地球連邦軍とネオ・ジオン軍残党組織「袖付き」の戦いを描いた物語だ。

 工業コロニー・インダストリアル7の工専に通う16歳の主人公バナージ・リンクスは、袖付きの筆頭であるオードリー・バーン(ミネバ・ラオ・ザビ)と偶然の出会いを果たす。
ラプラスの箱によって引き起こされるかもしれない戦争を止める、という目的を持ったオードリーに対して、何気なく過ごす日々に“ずれたような感覚”を覚えていたバナージは強く心を動かされる。

 ラプラスの箱に起因してコロニー内で連邦軍と袖付きのMS戦闘が勃発すると、バナージは単独でオードリーの捜索を開始。運命に導かれるように、ユニコーンガンダムの格納庫へと辿り着く。そこにいた瀕死の父、カーディアス・ビストからラプラスの箱の鍵たるユニコーンガンダムを託されると、戦いへの覚悟を胸に出撃するのである。

 直後に「袖付き」所属の強化人間マリーダ・クルスのMS・クシャトリヤと接敵するも迷うことなく突撃し「ここから……出ていけぇー!」とスラスター全開でクシャトリヤを一気にコロニーの外へと押し出す。

 そのおぼつかない操縦から戦闘経験の無さが露見し窮地に追い込まれるが、ニュータイプであるバナージの感情に呼応してユニコーンガンダムが「NT-Dシステム」を発動。バナージの思考によって動くユニコーンガンダムの驚異的な戦闘力により、クシャトリヤを圧倒し窮地を脱する。パイロットスーツを着用していなかったために身体的負荷を負ったバナージは、コックピット内で気を失うのであった。

 バナージの初陣における撃墜数は0。しかしながらユニコーンガンダムの性能を活かして導いたバナージのこの戦果は、物語の鍵となるニュータイプが持つ可能性を大いに示した戦いぶりであった。

 今回紹介した以外にも、「宇宙世紀」を舞台とした物語は、漫画や小説なども含めて多数描かれている。それぞれの作品を象徴する主人公たちの素性や戦う理由、その操縦技術などを比較しながらファン同士で議論を交わすのも、『ガンダム』作品の楽しみ方の一つだ。

 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の主人公アマテ・ユズリハは物語を通じてどのようなパイロットへと成長するのか、その活躍に大いに期待したい。

  1. 1
  2. 2