
ゲームやアニメ、漫画、スマホに至るまで、令和の子どもたちの周りにはさまざまな娯楽がある。アニメに関してはサブスクを利用し、オープニングやエンディングを飛ばしてわずか20数分を一気見していくスタイルの子どもも多いようだ。
そんな我が家には9歳の息子がいる。息子はまさにそんな見方をしている影響か、映画を“見ることができない”。というのも約2時間のなかで起こる「起承転結」を待ちきれず、なんと飽きてしまうのだ。
とはいえ、最近の話題作のほか『ドラゴンボール』や『幽☆遊☆白書』、『ジョジョの奇妙な冒険』など、歴代の名作を好んで見ているので基本は放任なのだが……。でも、個人的にどうしても見ておいてほしい映画はいくつかある。なかでもジブリ作品は、子どものうちにひとまず見てもらいたい。
そこで今回「鑑賞会」と銘打って、1989年に公開された『魔女の宅急便』を一緒に視聴してみた。今回も飽きてしまうかと思いきや、その様子はなんとも意外なものであった。
※本記事には作品の内容を含みます
■掴みはバッチリ! ハプニングに爆笑する息子
本作が始まってすぐ、意外にも息子は爆笑していた。
まずは、キキが故郷を旅立つシーン。木に激突し鈴を鳴らしながら空を飛んでいくキキの姿に「相変わらず 下手ねえ」と、感慨深そうにキキの母・コキリがつぶやく印象的な場面だ。「すっご!」と言いながら、なぜか大笑いする息子。
そのすぐあと、嵐を避け貨物列車に乗り込み体を休めたキキが、翌朝、牛に足を舐められて飛び起きるシーンでも笑いまくる。
また、キキが住むことになるコリコの町に到着したシーン。あわや大事故になってしまいそうなほど危なっかしく飛び回るキキに「あっぶない!」と目を丸くしながらも、また笑う。
一番ウケていたのは、ニシンのパイの老婦人とお手伝いをしている老婦人のシーンだ。2人が出てくるたび、ワクワクとした様子でテンションを上げていた。
ところで、筆者が本作を見たのは7〜8歳の頃。可愛いキキに憧れて、近所の野良猫に話しかけ、ホウキにまたがりジャンプした。1人でホットケーキを焼き、自立して働くキキを憧れのお姉さんのような気持ちで見ていた。大笑いは……たぶんしていない。
そのあたりは、男子と女子の違いがあるのかもしれない。キキに憧れるというよりは、作中起こるハプニングに対してただただ反応していた息子。男子はやはり刺激が好きなのか。
ただ、普段映画を見ない息子にとって掴みはバッチリだったようで、そのまま興味を持って最後まで鑑賞してくれることとなる。
■唯一、静かになったシーン…「ニシンとかぼちゃのパイ」のくだりに何を思う?
唯一、息子が静かになったシーンがある。老婦人から依頼を受け、大雨の中、キキが必死にパイを守りながら孫のところに宅配をする「ニシンとかぼちゃのパイ」のくだりだ。
老婦人が孫のために一生懸命焼いたパイに対し「あたしこのパイ嫌いなのよね」と言う女の子。「こういう子、イヤだな」と、ぽつりと言った息子はその後、パーティーにも行かず、風邪を引いてしまったキキばりに元気がなくなってしまった。きっと、自身の推しである老婦人たちをかわいそうに思ったのだろう。
筆者は、ずぶ濡れのキキにタオルくらい貸してあげたらいいのに……とは思ったが、でも、孫の気持ちも分からんでもないと思ってしまった。子どもは正直で、時に辛辣だ。
ちなみに宮崎駿監督はこのシーンの女の子について「あれは嘘をついていない、正直な言い方ですよ」「要らないっていうのに、またおばあちゃんが料理を送ってきて、みたいな」と、のちに語っている。
そんな息子は現在「プチ反抗期」、世で言う「ギャングエイジ」が始まったようだ。筆者が良かれと思ってしたことに対し「鬱陶しい」と態度で示すことも多々ある。そんな自分と孫の女の子を重ねて見ていただろうか。とにかく、このシーンを見せてあげられて良かったなと思った。
そういえば今回、字幕付きで見ていたのだが、お手伝いをしている老婦人は「バーサ」という名前であることを初めて知った。「ばあさん!」と聞こえていたので、名前はないのかとすっかり勘違いしていた。