■13歳には酷? キキに襲いかかる数々の困難
人生には困難がつきもの……それはそうなのだが、作中、キキには困難がここぞとばかりに襲いかかる。
晴れの日に旅立ちたかったのに大雨に降られ、ようやく降り立った街では警官に怒られ、街の人には知らんぷりをされる。ようやく掴んだ仕事でも失敗したり、時間に間に合わなかったり、淡い恋もなんだかうまくいかない。
極めつけは“唯一の特技”である魔法が弱くなって飛べなくなったうえ、ホウキも折れてしまい、さらに相棒・ジジとも話せなくなってしまう。
キキは最後に「落ち込むこともあるけれど 私 この町が好きです」と、両親への手紙に綴っているが、“こんなに踏んだり蹴ったりの状況だったのか、そりゃ落ち込むよなあ……”と、なんだか胸が痛くなってしまった。
しかし、独り立ちをして大人になるというのはこういうことなのだろう。13歳という多感な時期の少女がいろいろ思い悩みながらも1つ1つ困難をクリアしていくなかに、大人への階段は準備されているように思う。
キキが飛行船からぶら下がるトンボを助けるクライマックスでは、その様子をテレビで見ていたオソノさんや老婦人たちのように「頑張れ!」と息子と2人、エールを送りながら見ていた。意地もプライドも周りにどう思われるかという心も捨て、ただただトンボを助けることに集中するキキはカッコ良かった。
『魔女の宅急便』を見て、息子は「いつも見ているアニメの感じと違った」「思ったより面白かった」と言った。実は5歳のときにも一度視聴させたのだが、冒頭で「つまんない」と言って離脱したことをすっかり忘れているようである。
そんな息子は翌日、傘にまたがり、デッキブラシのシーンを再現していた。やっぱりこれは、男女共通でやってみたくなるものらしい。
そして、約30数年ぶりに本作を見た筆者、得られた感動がたくさんあった。
いきなり機嫌が悪くなったり、そうかと思えば些細なきっかけで元気になったり……子どもの頃には共感できなかったキキの気持ちが、なぜか手に取るように分かるのだ。それは、筆者自身が通ってきた道だからかもしれない。
『金曜ロードショー』では、5月2日に2023年に公開された最新作『君たちはどう生きるか』、そして、5月9日に『紅の豚』が放送予定である。我が家でもまた「鑑賞会」をおこない、新しいワクワクを息子と分かち合いたいと思う。