■オスカルやマリーアントワネットを通し、女性の生き方を学べる点は多い
また『ベルサイユのばら』は、女性の生き方について学べる点も多い。
男装の麗人として登場する主人公・オスカルだが、なぜ男装をしていたのかというと、将軍職である父親がオスカルをジャルジェ家の後継者にするため、男子として育てられたためである。当時のオスカルはそれに従って生きてきたものの、多くの人と出会い経験を積むうちに、その生き方に迷いが生じていく。
また、アントワネットもわずか14歳でオーストリアから見知らぬ土地であるフランスへと嫁ぎ、好きでもない男性と結婚をしなくてはならなかった。
幼いころから右も左も分からぬまま王妃としての生活を強いられてしまえば、ポリニャック夫人のような悪女に利用され、賭博にハマってしまうのも無理はないかもしれない。
しかし2人とも成長するにつれ、自分は何をしたいのか、守るべきものは何かと悩み、葛藤し、そして答えを導き出すこととなる。
そして、オスカルは愛するアンドレとともにフランス市民のために立ち上がり、アントワネットは愛する家族のために最後まで王妃として生きていくのだ。
このような彼女たちの姿は、これまで社会の枠に従って生きてきた多くの女性たちと重なる。自分の生き方を模索し、少しずつ自立を遂げていく現代の女性像ともリンクするのではないだろうか。
男性として育てられたオスカルが自分らしく生きようともがくところや、アントワネットが抱える個人的な苦悩に対し、現代の女性が共感できる点は多いだろう。
昭和の時代、『ベルサイユのばら』は原作漫画はもちろん、アニメも人気が高く、過去には何度も再放送されてきた。
そのため筆者のように、子どもならではの思い出がある人も多いだろう。そして、そんな本作を今あらためて読み返してみると、また違った見方ができるのも面白い。
ちなみに今回、筆者の娘である20歳の令和っ子も初めて本作を読んだ。アントワネットとフェルゼンの恋愛に「不倫はダメだよね」と、現代っ子らしい意見を述べつつも、「これぞ、昭和ロマンが詰まった壮大な作品だ」と、感動していた。時代背景は違えど、現代の若者にとっても心に刺さる部分があるのだろう。
不朽の名作である『ベルサイユのばら』。令和のもっと先の世代にも、受け継がれていってほしい。