「バーザムショック」の背景と余波…『機動戦士Zガンダム』の意外な人気MS「バーザム」はなぜ支持されるのかの画像
「HGUC 1/144 バーザム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 テレビアニメ『機動戦士Zガンダム』に登場したモビルスーツ「バーザム」に関連する、「バーザムショック」という言葉をご存知だろうか。

 これは2017年に発売されたガンプラ「HGUC 1/144 バーザム」が予想もしない爆発的なヒットを記録したことを指して、一部のガンダムファンの間で「バーザムショック」と呼ばれたことに端を発する。

 それどころか、バンダイ社内でも「バーザムショック」の言葉は浸透しているようで、2019年に開催された『機動戦士ガンダム SEED DESTINY』のスペシャルトークショーにて、ガンプラの企画開発者の齊田直希氏は「(バーザムショックは)社内で社会現象のように語り継がれている」と発言。マイナー機と思われていたバーザムのガンプラが爆発的に売れたことにより、ほかのマイナーな機体の企画が通りやすくなったと明かしている。

 アニメの劇中ではそこまで活躍シーンのなかった「バーザム」が、なぜそのような人気を得たのか。バーザムというMSについて掘り下げてみたい。

■オンリーワンなデザイン……実はティターンズの象徴?

 バーザムは劇中での開発経緯はやや特殊である。『週刊ガンダムモビルスーツバイブル 103号』(デアゴスティーニ・ジャパン)には、「グリプス戦役後半にジムIIやハイザックに代わる新たな主力機としてティターンズが推進して開発された」と書かれている。そして実は「ガンダムMkーII」をベースにした簡易量産機だった。

 とはいえ、その外観はそれまでのティターンズの機体に比べて異質なデザインが採用され、とくに目を引くのが頭部にある“トサカ”のような形状のブレードアンテナだろう。横から見ると猛禽類の翼のようで、「ティターンズ」のシンボルマークをイメージしているようにも見える。

 またバーザムといえば、股間の位置に存在する謎のパーツも印象的だ。これがビームの発射口かバーニアなのか長らく謎に包まれていたが、「HGUC 1/144 バーザム」の説明書によると、「ソケット状のパーツ」と記載され、まさかのエネルギーコネクターであることが判明した(ちなみにバーニアユニットも装着可能らしい)。

■劇中での活躍シーンが少ない理由は……!?

 『機動戦士Zガンダム』のアニメ劇中でバーザムが最初に登場したのは第35話。グリプス戦役における終盤の量産機として戦線に投入された。

 しかし有名なパイロットが乗ったわけでもなく、劇中での目立った活躍シーンは皆無。それに、『Zガンダム』以降の宇宙世紀の映像作品にバーザムが登場しないのも悲しい事実だ。

 おそらくそれなりの数が量産され、戦場にも投入されたはずだが、アニメではヤザン・ゲーブルの部隊の配下として登場した機体くらいしか印象にない。もしかすると大半のバーザムは、ティターンズ艦隊を薙ぎ払ったコロニーレーザーによって殲滅させられてしまったのかもしれない。

 また、ゲーム『SDガンダム Gジェネレーション-F』の解説文では「性能面でこれといった特徴がない」「従来のMSと機体構造が異なるため量産されなかった」とさんざんな書かれようだった。しかし、ムーバブル・フレームやガンダリウム合金が採用されたことにより、ジムIIに比べたら大幅に性能は向上している。

 バーザムがその後の映像作品から姿を消した背景には、過激な思想を持っていたティターンズのイメージを払拭したかったという可能性も考えられそうだ。

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