■野生動物を飼うことの無謀さ「野生ペット小屋」
コミックス30巻に掲載されている「野生ペット小屋」は、のび太が野生の子ゾウをペットにする話だ。
しずかやジャイアン、スネ夫からペットの話を聞いたのび太は、ドラえもんに“どうせ飼うならライオンとかゾウを飼いたい”と、無茶なお願いをする。
そこでドラえもんが出したのが、「野生ペット小屋」というひみつ道具だった。これはスイッチを入れると野生動物の生息地につながり、動物が生息地にいる環境で飼育できるものである。
そこでのび太はひとりぼっちでいた子ゾウに出会い、ハナちゃんと名付けて飼うことにした。
のび太は手厚くハナちゃんの世話をしていく。体質にあうようなミルクを配合したり、ビックライトで巨大にしたバナナを与えたり。夜中にハナちゃんがハイエナに襲われそうになったときには一時的に部屋にかくまい、一緒の布団で寝たりもしている。その様子はまるで本当の兄妹のようだった。
そんな日々が続くも、別れはやってきてしまう。ある日、ハナちゃんの背中に乗って遊んでいたのび太は、偶然ハナちゃんの親ゾウに遭遇するのだ。取り返そうとしてくる親ゾウだったが、のび太は「いまさらかってだよ!!」「ハナちゃんはずうっとぼくといっしょにくらすんだ」と、突っぱねる。
しかし日本の気候に合わないハナちゃんは体調を崩してしまい、最終的にのび太はハナちゃんを親ゾウの元へ返すのであった。
ラストシーンで「ほっとしたような、さびしいような……」と、空を見上げるのび太。どういうケースであれ、飼い主はかわいがってきたペットとの別れに深い寂しさを覚えるものである。
のび太はいつもペットを飼いたがり、こっそり家の外で飼う描写がたびたびあった。そのたびにママが「うちでは飼えません!」と、怒っているのが印象的だ。
子どもの頃はそんなのび太を叱るママをひどいと思っていたけれど、ペットを飼うのは責任重大なことなので、今ならママの言いぶんも分かるというもの。
しかしこっそり甲斐甲斐しくペットの世話をする親バカ全開のび太を見ると、やっぱり応援したくなってしまうのだ。とくに日頃からペットを愛する人にとっては、のび太の行動は決して他人事とは思えないだろう。