■のちの傑作の礎となった知る人ぞ知る名作
40年近くも連載が続く超人気シリーズ『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦さんの初連載作品も短期で終了している。
1982年に連載開始された『魔少年ビーティー』は、奇術やトリックが得意な少年ビーティーとその友人の公一が怪事件に巻き込まれていくというストーリー。
しかし、同作はコミックス1巻分で終了。集英社オンラインのインタビューにて荒木先生は、「読者から人気がなく、早々に打ち切りが決まりました」と語っていた。ただし、最終話の読者アンケートの結果は良かったそうで、「打ち切りになっても次につながるようなかたちで終われたのはよかったと思っています」と当時を振り返っている。
この『魔少年ビーティー』の終盤で描かれた頭脳バトルのおもしろさは、たしかにのちの大ヒット作『ジョジョの奇妙な冒険』にも活かされているように感じられる。
次に荒木先生が連載した『バオー来訪者』も短期連載作品だったが、『ジョジョ』につながる要素がふんだんに詰め込まれたバトルアクション作品だった。
とくにバオーに変身した主人公・育朗の「バルバルバルバルバルバルバル」といった独特の咆哮や、敵がやられる際の「どぐげぇぇぇッ!」といった断末魔などは強烈なインパクトを残した。
また、「『バオー武装現象(アームド・フェノメノン)』だッ!」や「これがバオー・シュディングビースス・スティンガー・フェノメノンッ!」といった、やたらと長い必殺技や解説文もカッコ良かったが、同作は全17話の短期連載で終了した。
両作品とも時代を先取りしすぎたのか、連載が終わってから『バオー来訪者』は映画化やOVA化されたり、『ビーティー』も原作・西尾維新さん、作画・出水ぽすかさんでスピンオフ化されたりしている。
■人気バレー漫画の作者の初連載作は一風変わった怪談モノ
大人気バレーボール漫画『ハイキュー!!』の作者・古舘春一さんの初連載作品『詭弁学派、四ッ谷先輩の怪談。』は全18話、約4か月で連載終了となった。
同作は生徒から都市伝説的な扱いを受けている通称「四ッ谷先輩」が、怖がりな少女・中島真と学校の七不思議にまつわる事件を解決していく新感覚ロジカルホラー。
よくある怪談モノとは違って、犯人への心理的圧迫や事件の真相を怪談とうまく絡めて、派手なバトルや演出もなしに物語を成立させていた点が素晴らしい作品だった。
これが「打ち切り」だったのか、それとも予定通りの短期連載だったのかは不明だが、最後までていねいに描かれ、本作の語り部である四ッ谷が「これにて、お了(しま)い 」のセリフで物語をきれいに締めたのが印象的だ。
登場キャラ独特の味のあるセリフ回しが秀逸で、短期での連載終了を惜しむ声も目立った。もしかすると古舘先生の後のブレイクを予見したファンもいるのではないだろうか。
どれほど良作であっても、連載が行われた「時代」や「タイミング」など、さまざまな理由で埋もれてしまうことはありうる。だが、そういった作品を生み出した作者は、やがて別の作品でブレイクしたり、作品自体が再評価されたりする可能性もあるのだ。あらためて短期終了作品を読み返してみると、当時は気づかなかった魅力を再確認できるかもしれない。