シリーズ最新作『DAIMA』では“赤い神龍”まで登場! 『ドラゴンボール』物語の鍵を握る「神龍のルール」を振り返るの画像
DVD『DRAGON BALL THE MOVIES』#15 ドラゴンボール 神龍の伝説(TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D))(C)バードスタジオ/集英社・フジテレビ・東映アニメーション(C)東映・集英社・東映アニメーション

 世界中に散らばった7つのドラゴンボールを集めれば「神龍」が現れ、どんな願いでも1つ叶えてくれる——そんな夢のような設定が多くのファンを魅了し続ける、鳥山明さんの『ドラゴンボール』シリーズ。

 しかしこの神龍、実は“なんでもアリ”というわけではなく、叶えられる願いには明確な「ルール」があるのをご存じだろうか。

 神龍のルールは、物語の展開や世界観そのものに大きくかかわる要素である。だからこそ、そのルールを知ることは『ドラゴンボール』の世界をより楽しむための近道でもあるだろう。

 物語ごとにアップデートされていった神龍の「願いのシステム」はどのようなものだったのか、歴代の神龍たちに共通するルールをおさらいしてみよう。

■神龍の種類と「願いの回数」の違い

 初期の『ドラゴンボール』に登場した神龍のルールは、きわめてシンプルだった。“地球上に点在する7つのドラゴンボールを集めると神龍が出現し、願いを1つだけ叶えてくれる”……と、ただそれだけ。

 だが、物語が進むにつれてこの願いのルールも徐々に進化を遂げ、より柔軟で複雑な仕様へと変化していく。

 たとえば、デンデが地球の神となり神龍を再構築した際には、“最大3つ”まで願いを叶えられるようにパワーアップ。これによってストーリー上の選択肢も広がり、複数の問題を一度に解決できる展開が可能となった。

 しかし、最新作アニメ『ドラゴンボールDAIMA』では、このルールに意外な裏があることが判明する。なんと、3つの願いを叶えてもらえるのは、悟空たち“常連メンバー”だけに許された特例だったのだ。まるでラーメン屋で常連にだけ味玉が3つサービスされるようなノリであり、ファンのあいだではちょっとした驚きを呼んだ。

 一方、ナメック星にも“夢の神”を意味する神龍「ポルンガ」が存在する。こちらはナメック語での呼び出しと願いが必要だが、基本的に「3つの願い」を叶えてくれる。詳細は後述するが、性能面では地球の神龍を上回る部分も多く、より万能感のある存在だ。

 さらに『ドラゴンボール超』では、宇宙規模の存在「超神龍(スーパーシェンロン)」が登場。ボール自体が星1個ぶんほどの大きさで、召喚も願いも神の言葉で唱えなければならない。事実上、神クラスの存在でなければ扱えないハイエンド仕様の神龍なのだ。

 この超神龍によって叶えられる願いは1つだけだが、文字通り「どんな願い」も叶えてくれるそのスケールにふさわしい圧倒的な性能を誇る。

 そして『ドラゴンボールDAIMA』では、シリーズでも初の存在となる「赤いポルンガ」が登場。大魔界に封印された3つのドラゴンボールを集めると出現するこの神龍は、見た目こそナメック星のポルンガに似ているものの、叶えられる願いは1つだけ。

 しかも言語もナメック語仕様で、どこか“原点回帰”を感じさせる設定になっている。また、このドラゴンボールは“タマガミ”と呼ばれる存在に守られており、異色の世界観とあいまって特別感を放っていた。

■「叶えられない願い」が生む物語の緊張感

 神龍といえど、万能ではない。『ドラゴンボール』に登場する神龍には、それぞれ“叶えられない願い”に関する明確な制限が設けられており、この縛りが物語に深みを与えてきた。

 たとえば、初期の地球の神龍には「寿命で死んだ者は蘇生できない」「一度蘇った者を再び生き返らせることはできない」といった、死に関する厳しいルールが存在する。

 この制約は「フリーザ編」で重要な役割を果たすことに。ナメック星でフリーザに殺され、2度目の死を迎えてしまったクリリン。それが悟空の怒りを爆発させ、伝説の超サイヤ人への覚醒につながったのだ。

 一方、ナメック星の神龍・ポルンガは、死者の蘇生に関する制限が地球の神龍よりも緩やかだ。寿命で死んだ場合はやはり蘇生できないものの、同じ人物を何度でも蘇らせることが可能。また、はじめは1回の願いで1人しか生き返らせられない仕様だったが、のちにアップデートされ、1つの願いで複数人を一度に蘇生できるようになる。

 このポルンガの力によって、地球の神龍では不可能であっただろうクリリンも復活。さらに「魔人ブウ編」では、ブウにお菓子などに変えられて死んだ者たちを復活させるという高難度な願いも実現しており、高性能な神龍として描かれた。

 ただし、神龍が叶えることができるのは、あくまで「創造主の能力の範囲内」に限られるため、創造主の力を超える願いは実現不可能だ。かつて、ベジータやナッパが地球に来ると分かっていながら止められなかったのもこのためだった。

 さらに「創造主が死ぬとドラゴンボールも消滅する」というルールも重要なポイントだろう。地球の神龍もナメック星のポルンガも、それぞれ神と最長老の死によって一度は消滅を経験している。

 こうした限界の存在が、ドラゴンボールをめぐる物語に数々の葛藤や緊張感を与えてきた。願いを叶える力が万能でないからこそ、逆にドラマが生まれていたといえるだろう。

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