■リアルを追求しすぎたデスゲーム…「なりきりチェス」
お馴染みのドラえもんを筆頭に、7名の個性豊かな面々が集結する「ザ・ドラえもんズ」。
彼らもそれぞれ個性豊かなひみつ道具を持っているのだが、なかでも、そのあまりに凶悪な能力で読者の度肝を抜いたのが、『ザ・ドラえもんズスペシャル』に登場した「なりきりチェス」だろう。
ドラ・ザ・キッドが持つ道具で、作中ではチェスがうまくなりたいと願うのび太のため、ドラリーニョによって使用された。
しかし、当然ただチェスをプレイする……というだけで話が終わるはずもない。チェスで遊ぼうとしたのび太とドラえもんズは、中世を彷彿とさせる特殊な世界へ飛ばされてしまうのだ。
そこはなんとチェスゲームの世界だった。使用者たちはチェスの駒となり、実際に敵兵士と剣で斬り合うなど、実際の戦いを体験できる。
臨場感溢れる戦闘を疑似体験できる……といえば聞こえはいいが、実はこの「なりきりチェス」は脳に直接作用し、ゲームでの痛みを実際の痛みとして感じてしまう危険なゲームだった。
しかも、一度起動すると決着をつける以外に中断するすべはなく、負けたチームは問答無用で処刑されるといった、なにからなにまで凶悪な仕様。過去にショック死する人も出たことから、発売禁止になっていた。
最終的にはのび太の機転により犠牲者を出さずにゲームを終えることができるのだが、こんな危険なゲームをなぜドラ・ザ・キッドが所持していたのか、なかなか謎深いエピソードとなっている。
作中でのび太の願いを叶え、ときにはピンチから救い出すひみつ道具たち。どれもこれも夢溢れる奇想天外な性能のものばかりだが、一方で思いがけない欠陥品も多く、その予想だにしない効果に少しゾッとしてしまう。
問題のひみつ道具が登場するエピソードはホラーテイストなものも多く、何気なく読んでいて、思わぬトラウマとなってしまった読者も多いのではないだろうか。