■勝負も激励も全力だった、赤木との関係
実は、神奈川県バスケ界で赤木よりも早く頭角を現していたのが魚住だった。しかし、ある試合で赤木に完敗し、その評価は一気に逆転。それ以降、2人は互いに強く意識し合うライバルとなっていく。
湘北との練習試合では「オレが勝つ」と、握手を拒否する魚住。しかし、試合を終えたあとは自ら赤木に手を差し出し、強く握手を交わしている。
インターハイ出場をかけた神奈川県大会でも、いまいち調子が上がらない赤木に対し挑発を繰り返す魚住。それは、この試合が“2人にとって最後の真剣勝負”になることを自覚したうえでの、魚住なりの熱い激励だっただろう。
そして、その試合でも終了後には互いに涙を流しながら抱き合う。その姿はただのライバルではなく、戦いを通じて深く結ばれた“真の友”そのものだった。
さらに、インターハイ会場に駆けつけ、ガチガチに緊張する赤木に板前姿でエールを送る。あの一コマには魚住の男気と友・赤木への熱い想いが凝縮されている。
残念ながら、2022年に公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』ではカットされていたが、2人の絆を象徴する忘れがたい名シーンだ。
『SLAM DUNK』連載当時、魚住は華やかなプレーやスター性の面で、他の人気キャラクターに一歩譲っていたかもしれない。だが、大人になった今だからこそ、不器用でも真っすぐに努力を重ね、仲間のために尽くす彼の姿がやけに胸に響く。
高校バスケを引退した魚住は、家業を継ぐため、“次の夢”である板前の道へと進むことを明言している。“父親との約束だったから18歳から修行を始める”と決意していたようだが、その生き方にも彼らしい実直さが垣間見える。
きっと魚住はバスケットと同じように料理の世界にも懸命に向き合い、立派に道を切り開いていくのだろう。