■どの国も頭を抱えるゴミ問題「ルーズゾーンの妖怪」
同じく11巻「ルーズゾーンの妖怪」のエピソードでは、ゴミに埋もれた星が登場する。
だらしがないルーズな星「ルーズゾーン」に到着予定の999号。しかしその前に列車の床が抜けてしまい、鉄郎は宇宙へ放り出されてしまう。
空間軌道のシールドの中を通り、ルーズゾーンに落ちた鉄郎。だがそこは、見渡す限りゴミの山であった。駅ですらゴミに埋もれてしまい、999号も停車場所が見当たらないというありさまだ。
なんでも、その星に以前住んでいた住人はあたりかまわずゴミを捨て続け、その結果ゴミ山になった星を見捨てて他の星に移住したのだという。
今もゴミ問題は日本だけでなく世界各国で起きている。しかもこのルーズゾーンのように、ゴミだらけになった場所を見捨てて移住している人も少なくない。
日本は昔と比べると、ずいぶんゴミの不法投棄は減った印象があるが、家の中にゴミをため込む“ゴミ屋敷”という身近な問題が増えている。いわば自宅がルーズゾーンのようになってしまい、周りに迷惑をかけるケースも少なくないのだ。
このエピソードは「ゴミの山をつくれる所はとても幸せな所よ……」というメーテルのセリフで締めくくられている。確かにゴミが多いということは、それだけ資源があって豊かな証拠とも言えるだろう。しかし不要になったゴミを完全に消去することはできない。今も世界中であふれかえったゴミに頭を抱えるトラブルは続いているのだ。
このように『銀河鉄道999』には、令和の日本にもあるトラブルを予見しているようなエピソードが多い。しかもどのエピソードも綺麗に解決できたわけではなく、肥大化した住人はそのまま太り続け、ゴミはゴミ山のまま終わるといったオチが何ともリアルだ。
今の日本も、現状抱えている問題をすぐに解決することは難しいだろう。しかし本作に登場する住人たちのように、体を機械化しないと順応できないといった結末だけは避けたいものである。