
松本零士さんの『銀河鉄道999』は、宇宙を旅する少年・星野鉄郎と、謎の美女メーテルが、999号に乗って未知なる星を巡るストーリーだ。
途中に立ち寄る駅では多くの人と出会うが、なかには気難しい人物やトラブルを抱えた星も存在する。しかもそこで生じるできごとは、令和の日本でも見聞きするようなトラブルが多いのだ。
今回は、そんな現代にも通じるような『銀河鉄道999』で、現代日本を予見していたかのようなエピソードを紹介したい。
※本記事には作品の内容を含みます
■体を動かすのは面倒…究極に太ってしまった住人たち「なまけものの鏡」
『銀河鉄道999』には、近年取り沙汰されている現代人の「肥満」を取り扱った話がある。それがコミックス4巻「なまけものの鏡」というエピソードだ。
同名の星に到着した999号。そこはすべてが機械化された快適な星だった。しかし不思議なことに、どこを探しても人の気配がない。
そこで鉄郎が住宅街の家を訪ねてみると、ドアを開けたとたん“ブヨブヨの何か”に弾き飛ばされてしまう。驚く鉄郎に2階の窓から巨大な住人が話しかけ、なんとそれがその住人の肥大化したひざだったことが判明するのだ。
要は、この星に住む人間はみな「なまけもの」になっており、少し動いただけで家が破裂してしまうほど体が肥満化していたのだ。
実際には家が破壊されるほど体が肥満することはないが、運動不足が原因で肥満に悩む人は多いだろう。かくいう筆者も気づけば何時間も座りっぱなしで、体脂肪は年々増えている……。
スマホをはじめとした便利な文明が進むにつれ人は動かなくなり、その結果「ナマケモノの鏡」のように体が肥大化してしまうことは実際にも起きているのだ。それを放置して太りすぎると、このエピソードのように家から出られなくなることもありうるかもしれない。
人間らしい生活とは何かを、思わず考えさせられるエピソードだ。
■こういう年配者にはなりたくない…夢ある若者に見苦しい嫉妬をする大人「ヤーヤボールの小さな世界」
コミックス11巻「ヤーヤボールの小さな世界」は、若者に見苦しく嫉妬をする男の末路が描かれたエピソードだ。
同名の星に降りた鉄郎とメーテル。そこは地球に似ている快適な小さな星だった。そこで鉄郎は、ヤーヤボールという男性から過剰なおもてなしを受ける。
しかしその直後、彼によって地下室に閉じ込められてしまう鉄郎。その理由は鉄郎が大きな夢を抱いており、自分より良い機械の体を手にすることに嫉妬したからだった。
「ぼくにできなかったことをする人間がいるのが気にくわないんだ!!」と、激しく嫉妬をあらわにするヤーヤボール。しかし最終的には鉄郎が持つ“戦士の銃”の反撃に遭い、ボロボロになってしまう。
嫉妬は誰もが持つ感情ではあるだろう。だが若者に対し「昔はもっと苦労したんだから、同じような苦しみを味わうべきだ」というような一方的な年配者の考えは、ヤーヤボールと同じではないだろうか。
将来夢のある子どもたちに対し、大人は昔の苦労話を自慢するのではなく、その夢を全力で応援したいものである。