
独特の世界観によって読者を物語に引き込み、夢中にさせてしまう『週刊少年ジャンプ』(集英社)の人気漫画家たち。誰しもが知る大人気作品を手掛ける彼らだが、代表作以前にも多くの名作を生み出しており、その完成度の高さでファンを唸らせていた。
だが、なかには短期終了となり「もっと読みたかった」と残念だった作品もあった。のちに生み出される人気作の片鱗を感じざるをえない、人気漫画家たちの短編作品とはどんなものだっただろうか。さっそく見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■寄生生物の力に翻弄される青年の悲しき戦い…『バオー来訪者』荒木飛呂彦
1986年より連載開始された、荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』。本作はさまざまなメディアミックスをはじめ、今もなお新たなシリーズが描かれ続けている大人気作品だ。
独特のタッチで描かれたどこかホラーテイストな描写や、「波紋」や「スタンド」といった特徴的な能力による駆け引き、印象的なポージングなど、荒木氏ならではの個性が随所に光る作品である。
唯一無二の作風が魅力の荒木氏だが、実は『ジョジョ』以前にも短編作品を世に送り出している。
なかでも1984年から同誌にて連載された『バオー来訪者』は、全2巻という短い作品ながら多くの読者を魅了した。
本作は主人公の青年・橋沢育朗が自身の体に寄生した生物兵器・バオーの力を駆使し、彼を捕獲しようと襲い掛かる秘密結社・ドレスと激闘を繰り広げていく物語だ。
育朗はバオーの宿主として選ばれたことで望まぬ戦いへと巻き込まれていくのだが、ヒロインのスミレなどさまざまな人々との交流や、己の力への葛藤から徐々に成長を遂げ、最終的には自らの意志でドレスとの決戦に臨んでいく。
ホラー作品を彷彿とさせるインパクト大な描写や独特の擬音、科学的要素を取り入れた能力設定など、のちの『ジョジョ』にも通ずる点が存分に盛り込まれているのが非常に面白い。
短いストーリーではあるものの、秘密結社との戦いに巻き込まれる育朗の逃避行、能力の覚醒、葛藤や成長劇がテンポよく展開されており、一度読み始めたら引き込まれてしまうこと間違いなしだ。時代を経てなお、本作の新たなメディア展開や続編の登場を待ち望むファンも多いのではないだろうか。
■初連載でもスタイリッシュな描写は健在!『ZOMBIEPOWDER.』久保帯人
2001年より連載が開始された久保帯人氏の『BLEACH』は、死神の力に目覚めた高校生が、この世とあの世を舞台に壮絶な戦いを繰り広げていくバトル作品である。
久保氏ならではのハイセンスなセリフ回しやバトル描写、個性的なキャラクターが魅力の本作。原作は2016年に連載終了しているが、2022年からは約10年ぶりの続編となるアニメ『BLEACH 千年血戦篇』が開始。4クール目となる「禍進譚」の放送が今後予定されている。(2025年4月現在未発表)
そんな久保氏も『BLEACH』が登場する以前、1999年から自身初の連載作品となる『ZOMBIEPOWDER.』を描いている。
本作は、主人公である賞金首・芥火ガンマが、死者を蘇らせて生者に不死の力を与える「ゾンビパウダー」を探し旅をしていく物語だ。
舞台となる西部劇風の世界や、ガンマをはじめ常人離れした能力を持つキャラクターたち、そして洒落たネーミングやセリフ回しと、久保氏ならではの個性が発揮されているのが特徴だ。
とくにガンマはスタイリッシュな風貌もさることながら、チェーンソー風の機工を持つ大剣や鎧と融合した肉体を駆使し、剣術「火輪斬術」により相手を圧倒する姿が実にカッコ良い。
そして、ガンマと相対する敵キャラたちも当然曲者揃い。機工を仕込んだ武器や個性を活かした戦闘法など、少年漫画ならではの破天荒なバトルシーンを、久保氏は迫力と勢いに満ちたタッチで描いている。
『ZOMBIEPOWDER.』は全4巻で連載終了となったが、作中では未だ語られぬ謎も多いことから、いまだに続編を期待しているファンも少なくない。そのスタイリッシュな世界観を、アニメやOVAで見てみたいものである。