『ドラゴンボール』に『聖闘士星矢』も…終わりの雰囲気はまるでなし!? “ジャンプ黄金期”人気作品の「最終回前のエピソード」の画像
DVD『ドラゴンボール改』第7巻 人造人間・セル編(Happinet(SB)(D))@バードスタジオ/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 1968年に創刊し、多くの名作を世に送り届けてきた『週刊少年ジャンプ』(集英社)。近年は人気作品の最終回を事前告知しているケースが多く、たとえば『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平さん)や『呪術廻戦』(芥見下々さん)などでは、“最終回まで残り5話(週)”という記載があり、読者が名残惜しくも先入観を持って読めたものである。

 ところが、筆者が少年時代に読んでいた1980年中頃〜1990年代中頃にかけて、いわゆる「ジャンプ黄金期」には、突然最終回が訪れることもあり、ビックリさせられたものだ。

 そこで、終わりの雰囲気がまるでなかったジャンプ黄金期の人気作品の最終回直前のエピソードを振り返ってみたい。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

 

■超ヒット作品が突然の最終回? 天下一武道会の最中に…『ドラゴンボール』

 1984年に連載開始された鳥山明さんの『ドラゴンボール』は、1995年25号で最終回を迎えた。

 最終回前のエピソードは、壮絶を極めた「魔人ブウ編」が終わった10年後の世界が描かれていた。

 平和な雰囲気が漂うなか、主人公・孫悟空やベジータ、トランクスや悟天などの主要キャラは、まもなく開催される第28回天下一武道会に出場することを決めていた。あのワクワクの対戦がまた始まるのかと期待した読者は多かっただろう。

 さらに今大会には悟空が気にかける少年・ウーブも出場していたので、激闘になりそうな気配もあった。だが、何か雰囲気が違う。いつだって悟空と戦うことに燃えている宿敵・ベジータも、なぜかそんなに乗り気ではない様子だ。

 悟空は魔人ブウの魔法で、1回戦でウーブと対決できるように仕向ける。ウーブが秘めた力を開放して激熱バトルに入る流れかと思ったが、なんとここでいきなり最終回が訪れることに。

 あそこまでパワーのインフレ化が起こった本作なので、今考えるとこのタイミングでの最終回も理解できるが、当時はさすがに驚いた。まさか、天下一武道会の最中に最終回を迎えるなんて誰も思いつかなかったはずだ。

 ただ、最終回の入り方には感動してしまった。「むかしむかし…」から始まるナレーションは、悟空とブルマの小さな出会いからすべてが始まったことをあらためて振り返るような内容だった。これまでの長く重厚なストーリーを思い出し、切なくなってしまった記憶がある。

 そういえば「サイヤ人編」に入る前にも一度、最終回になりそうな時もあった。だが、あの時は「最終回じゃないぞよ もうちっとだけ続くんじゃ」と亀仙人がセリフを残していたので、安心したものだった。

 それにしても超ヒット作品だっただけに、この突然の最終回には本当に度肝を抜かれたものだ。

■緊迫の山王戦を終えて優勝まで行くのかと思いきや…『SLAM DUNK』

 1990年から連載が始まった井上雄彦さんの『SLAM DUNK』は、1996年27号が最終回だった。

 最終回直前は、主人公・桜木花道が所属する湘北VS山王工業の白熱した試合がまさにクライマックスを迎えていた。

 残り10秒を切ったところで山王のエース・沢北栄治にジャンプシュートを決められ、逆転されてしまった湘北。だが、その差はわずか1点差だった。

 次の瞬間、ゴール前へ向けて走る桜木。そして残り5秒、赤木からパスを受けた流川は自らドリブルでボールを運びゴール前でシュート体勢に入るも、河田雅史と沢北という山王最強のコンビがブロックに入っていた。ここで流川は桜木の姿を目にし、パスを出すのだ。

 ノーマークだった桜木がタイムアップと同時に放ったシュートは、見事リングに吸い込まれ、湘北が劇的な逆転勝利をおさめた。

 この最終回前のエピソードにおいて、セリフは桜木の「左手はそえるだけ…」という言葉のみ。圧巻の内容で痺れた。その後、犬猿の仲でもある桜木と流川がハイタッチをする名シーンがあるのだが、「ぷい」とそっぽを向くのも微笑ましく印象的だった。だが、その直後、この試合にすべてを出し尽くした湘北が3回戦で愛和学院に大敗したことが明かされ、最終回前のエピソードが終わる。

 そして最終回。宮城リョータがキャプテンとなった新チームの紹介や桜木のリハビリ模様が描かれ、物語は終わりを迎えてしまった。

 王者・山王に勝利する熱い展開だったからこそ、湘北がどこまで勝ち上がるのかと期待した読者も多かっただろう。当時も賛否両論あっただろうが、このタイミングでの最終回に当時はビックリしたものである。とはいえ、あの試合を超える感動はなかなか難しかったかもしれない。

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