■死してなお女王の権力が続く恐怖の星「交響詩『魔女の竪琴』」
コミックス9巻に載っている「交響詩『魔女の竪琴』」は、心を残した女王が住人を支配し続ける話だ。
海底が透けて見える美しい星に降りた鉄郎とメーテル。だが、降りた途端、何者かに狙撃されてしまい、気が付くとボロボロのホテルの一室にいた2人。ひとまず食堂で食べ物を頼むが、それは空気で膨らんだだけの粗末な食事であり、食堂で働く人々はもう3日も食べていないといった悲惨な現状だった。
その理由は、この星に住む人はほぼすべての食料を女王におさめないと死刑になるという法律があったからだった。しかもこの規則は、200年前から変わっていないという。
それを知った鉄郎たちは、女王が住む島へと向かう。しかしそこに居たのは200年ほど前に死んだ女王の亡骸だった。女王は自分が死んでも心だけはこの世に残し、機械によってこの星を支配し続けていたのである。
この星に降りたばかりの鉄郎たちが誰に襲われたのかは作中では明かされていないが、おそらく女王が残した機械装置によって攻撃されたのだろう。自分が死んでもなお権力を維持しようとした女王のおこないは、この地球でも過去に起こっていることであり、他人事とは思えない。
そしてこの星の末路は、さらに悲惨なものだ。住民たちが捧げた食べ物が腐ってメタンガスが溜まり、やがて引火して島ごと吹き飛んでしまうというのだ。まさに暴君の崩壊を描いたようなエピソードであった。
今回紹介した危険すぎる星の数々は、いずれもただ駅に降りただけの鉄郎たちが理不尽に殺されかけている。しかしストーリーをよく見返してみると、人間が作った兵器によって殺されかけたり、悪しき習慣が続いていたり、独裁政権によって弱きものが虐げられたりと、今の地球上でもよくある出来事なのだ。
このような星には絶対に下車したくないが、こうした物語を通して私たちが学ぶことは多いだろう。