
鳥山明さんによる『ドラゴンボール』(集英社)は、連載終了から長い時が経ってからも新作アニメシリーズが制作されるなど、世代を超えて愛され続けている。
本作のキャラで主人公・孫悟空と肩を並べて人気なのがベジータだ。最初は敵として登場するも、その後は良きライバル同士として悟空としのぎを削っている。
ベジータは冷酷で非情……そんなクールなイメージが強いかもしれない。しかし、それも悟空たちと行動をともにすることでどんどん変わっていっている。特にアニメでは、いわゆる「キャラ崩壊」で視聴者を驚かせたシーンも少なくない。
今回はそんなベジータのアニメ『ドラゴンボール』でのキャラ崩壊を振り返ってみよう。
※本記事には作品の内容を含みます
■破壊神ビルスのご機嫌取り
まず驚かされたベジータのキャラ崩壊が、破壊神ビルスとのやり取りだ。これは『ドラゴンボール超』第6話でのブルマの誕生パーティーで見ることができる。
ベジータは基本的にどんな相手にでも噛みついていくタイプだが、ビルスには全く違う行動を取っていた。とにかく機嫌を損ねないように気を遣っていたのだ。
その場にいた者の中でビルスの恐ろしさを知っているのはベジータだけ。ビルスがベジータの友達だと勘違いしてパーティーに招いたブルマをはじめとして、周囲の人間はなれなれしくビルスに接していた。そのせいでベジータはハラハラし通しだ。
そんな中、クリリンがロシアンたこ焼きを始めると、ワサビたっぷりの「大当たり」をビルスが食べないよう必死に祈る。そのかいあってか、ビルスは無事に普通のたこ焼きを食べておいしさに大満足。ベジータは「たこ焼きピラミッド盛り」を貢いでご機嫌取りに専念する。
これで一安心……と思いきや、トランクスの放った水鉄砲がビルスに命中して水浸しになってしまう。当然、ビルスはブチギレだ。
追い詰められたベジータは、雄たけびを上げながら突然海へ飛び込み、巨大なタコの足を手に入れてたこ焼きの調理を開始。ビルスに手ずからおいしいたこ焼きを振る舞って、機嫌を直してもらおうとしたのだ。
わざわざハチマキを締め、俊敏な動きでたこ焼き作りをするベジータ。家族や地球を守りたいからこその行動なのだが、あまりに必死すぎる姿がシュールだった。しかも、周りにその切実さが一切伝わっていないのが悲しすぎる……。
この予想外すぎるベジータの行動には、さすがのビルスも「怒る空気じゃなくなっちゃったね」と冷静さを取り戻していた。
■アラレちゃんとのバトル
次はまさかのアラレちゃんとのバトルだ。アラレちゃんといえば、鳥山明さんの代表作のひとつ『Dr.スランプ』(集英社)の主人公で、悟空の少年時代に登場してブルー将軍をあっさりと倒していた。
そんなアラレちゃんは『ドラゴンボール超』の第69話にも登場しており、ベジータと対決することになる。
アラレちゃんがベジータのことを遊び相手と思って突っ込むと、ベジータはすごい力で建物の中から外へと吹き飛ばされてしまう。これにはベジータの口から、「このデタラメな強さはおそらくギャグ漫画のキャラ……!」とメタ発言が飛び出すほどだ。この光景、どこかで見たような……と記憶をたどってみると、秋本治さんの『こちら葛飾区亀有公園前派出所』と『ドラゴンボール』のコラボ漫画を思い出した。
両さんがフリーザの攻撃を受けても無傷で何度も立ち上がる姿に、フリーザの部下が「あ、あいつはギャグ漫画の人間だ……!!!」と似たようなセリフを口にしていたのだ。
そこからのベジータはいいとこなしである。アラレちゃんをパンチで吹き飛ばし得意げな表情を見せるが、地球を1周して戻ってきたアラレちゃんに後頭部を蹴られてしまう。続けて「あっUFO!」と気をそらさせて不意打ちを食らわすと、首が取れて大慌て……。
その後、ロボットだと分かって安心するも、キックに頭突きと連続攻撃を受けてはるかかなたへと飛ばされるのだった。
一連の流れがギャグ漫画の世界になっていて、ベジータは完全にアラレちゃんのペースに巻き込まれていた……。