
数多くの名作を生み出し、読者を楽しませてくれている漫画家たち。遠い世界の住人にも思える彼らだが、時にコミックスのおまけコーナーやSNSなどでちょっとしたエピソードを明かし、その素顔をのぞかせてくれることも少なくない。
中でも思わずほっこりしてしまうようなエピソードは、ファンにとって嬉しいものだ。今回はそんな“有名漫画家のほっこりエピソード”を紹介していこう。
■はぐれた息子が超人気作家たちに囲まれていた荒川弘
『鋼の錬金術師』や『銀の匙 Silver Spoon』といった大ヒット漫画で知られる荒川弘さん。彼女は子育てに奮闘しながら人気漫画を生み出し続ける、バイタリティあふれる漫画家である。
荒川さんの作品のコミックスには、彼女の日常を綴ったおまけコーナーが収録されていることが多い。中でも、『銀の匙』コミックス第8巻に収録された「牛小屋日記 スーパーサ●ヤ人3人と農民の巻」で描かれた、小学館漫画賞の授賞式に参加したときのエピソードは印象的なものだった。
授賞式会場で荒川さんは、関係者との会話中、連れてきていた息子さんの姿が見えなくなったことに気付く。そして会場の中を探したところ、あるテーブルで大人に囲まれている息子さんを発見したという。
荒川さんはその光景を見て、大きな衝撃を受ける。息子さんと同じテーブルには高橋留美子さん、あだち充さん、藤田和日郎さんという超レジェンド級の漫画家が座っていた。それぞれ『うる星やつら』、『タッチ』、『うしおととら』と代表作を上げればキリがないほどの漫画家たち。息子さんは平然と飲み物を飲んでいたが、荒川さんは冷や汗が止まらなかったというエピソードがコミカルに描かれていた。
息子さんが出先の会場で突然見当たらなくなったのも含めて、この授賞式での出来事に荒川さんは相当焦ったことだろう……。それにしても、漫画ファンにとっては非常にたまらない、貴重な経験をした息子さんが実にうらやましい。
■娘は『ドラゴンボール』ではなく『銀魂』が好き!?鳥山明
世界中にファンを持つ鳥山明さんといえば、『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』などで知られる超レジェンド漫画家である。しかし、実は鳥山さんの娘さんは父親の作品を積極的に見てはいなかったという。
王道少年漫画にして世界中の少年少女の心をつかむ作品だが、残念ながら実の娘さんの心には響いていなかったようす……。しかし、彼女がみずから『ドラゴンボール』を読むようになったきっかけが、空知英秋さんの漫画『銀魂』だった。
『銀魂』は鳥山さんも連載していた『週刊少年ジャンプ』の人気作で、多くのパロディネタが登場することでも知られる。特に多いのが『ドラゴンボール』ネタ。「かめはめ波」が出てきたり、明らかに作中のシーンをパロディしていたりと、やりたい放題である。
これは空知さんが無類の『ドラゴンボール』ファンだからという単純な理由だ。そして、鳥山さんの娘さんが『銀魂』の大ファンという事実がまさかの展開を生むことになった。
鳥山さんの娘さんは『銀魂』のパロディネタを理解したいという理由で、父親の作品をすすんで読むようになったという。「大銀魂展」の公式パンフレットにて、鳥山さんが「僕の娘が超ファンです」「珍しく『DRAGON BALL』を読んでいると思ったら『銀魂』のパロディ部分の元ネタを知りたいだけでした」とメッセージを送っており、その事実が広く知られるようになった。
メッセージは「空知先生、ありがとうございます…。」と結ばれており、茶目っ気たっぷりに後輩の激励をしてくれる鳥山さんの人柄も伝わってきた。