
鳥山明さんによる『ドラゴンボール』(集英社)は、日本を代表するバトル漫画のひとつである。
主人公である孫悟空の成長劇や、彼を中心に繰り広げられる迫力満点のバトルシーンに誰もが魅了された。悟空が修行をするたびに強くなるのと同時に、新たな必殺技を身につけていくのも見どころとなっている。
そんな悟空の代表的な必殺技といえば、かめはめ波や界王拳だが、実は意外と勝負を決める場面では使われていない。それよりも意外な方法で勝ったりしているのだ。
今回は、悟空が大勝負で見せた“必殺技ではない決着の瞬間”を振り返っていきたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■渾身の右腕一本での攻撃
悟空の少年時代最後の大勝負となったのが、ピッコロ大魔王との戦いである。ただでさえ強かったピッコロ大魔王が神龍の力によって若返ったせいで、誰にも止められない状態となる。
そんな時に悟空は、超神水を飲んでパワーアップ。ピッコロと戦えるほどの強さを手に入れることができた。
そして、これまでの悟空とは違い、たくさんの仲間の死を背負っているからこその気迫に、ピッコロは逆に押されていく。
このままではまずい……。そう思ったピッコロの取った行動が、天津飯を人質にすることだった。悟空はピッコロに動くなと命じられ、そこから無防備な状態で石をぶつけられ立てなくなってしまう。
その後倒れてしまった悟空を前にピッコロは勝機と見て、上空に飛び上がり最後の一撃を食らわせようとする。しかし、悟空は諦めない。右腕が残っていたのを利用し、片手で気功波を繰り出すと、その勢いでピッコロのいる上空へと飛び上がった。
これに対してピッコロは両手を使い防御の態勢を取って身構える。悟空はラストチャンスだと思って右腕にすべての力を込め、「つらぬけーっ!!!!!」と叫んでピッコロに突っ込んだ。
すると、ピッコロは悟空の渾身の一撃を防げずに胴体を貫かれて敗北。右腕を残してしまっただけに……そんな言葉が聞こえてきそうになった。
悟空の力の源としてサイヤ人を象徴する大猿が描かれた場面もあったので、悟空は眠っていた力を無理やり引き出したのかもしれない。まさに手に汗を握ってしまうような、熱い展開になっていた。
■急降下からの頭突き
ピッコロ大魔王亡き後、その分身である息子(マジュニア)が悟空に再戦を挑むが、そこでもまさかの決着となる。それは第23回天下一武道会で見ることができた。
決勝戦まで上り詰めたピッコロと悟空は、それぞれ3年の修行を積み、以前よりもはるかに強くなっている。そのため、これまでの戦いとは次元の違う攻防を繰り広げていた。
力、技ともにほぼ互角のように見られたが、ピッコロによる最大の一撃に耐えられるかが勝負の鍵となる。悟空はその攻撃に見事耐え切り、体力を消耗したピッコロは反撃を食らってしまい立てなくなった。
勝負ありかと思いきや……ピッコロが口から怪光線を放ち、隙だらけの悟空の胸部を貫いたために、立場が逆転してしまう。
そこからピッコロは悟空の両足を折り、両手も使えさせなくさせてから、とどめの一撃を放とうとする。ここまでの展開は、前回のピッコロ大魔王との戦いとほぼ同じだ。しかし、この時のピッコロは父親の敗北をしっかり記憶しており、片腕を残したりはしていない。
動けなくなった悟空にピッコロの気功波が直撃して誰もが終わったと思ったが、悟空は次の瞬間、はるか上空にいた。なんと舞空術を使って逃れていたのだ。しかもピッコロはそのことに気付いていない。
その後、悟空は上空から落下する勢いを使ってピッコロに頭突きを食らわし、ピッコロは動けなくなってしまった。悟空はこの場面まで舞空術を一度も使っていなかったので、見事な伏線回収だったといえるだろう。